「自宅で太陽光発電やEVを使っていたら、V2Hも導入した方がよいと聞いたけど本当なの?」
「V2Hについて聞いたことはあるけど、実際にはどのくらい重要なの?」
太陽光発電やEVを導入もしくは検討している方で、V2Hも合わせて導入するか悩んでいませんか?
V2HはEVを活用して電気を効率よく使え、災害時の備えにもなる便利な機器です。太陽光パネルとも相性がよいですが、V2Hの詳しい機能については知らない方が多いのではないでしょうか。
そのような方に対して、この記事ではV2Hがどのような機器で何ができるのか、どのくらい重要なのかを数字や具体例を交えてわかりやすく解説します。
V2Hの導入を検討している方や自宅に太陽光パネルやEVを導入もしくは検討している方は、是非参考にしてみてください。
- V2Hとはどのような機器で何ができるか
- V2Hと太陽光パネルを組み合わせるとできること
- V2Hと蓄電池の違いとそれぞれのメリット
- V2Hの費用対効果
- V2Hの補助金制度
- V2Hの初期費用や選び方
- V2Hのリースサービス
V2Hとは?
V2H(Vehicle to Home)とはEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)のバッテリーに充電された電気を自宅で使えるようにする装置です。
家庭からEVへ電気を供給できても、EVから家庭へは電気を供給できません。しかし、V2Hを設置するとどちらにも電気を流せるようになります。
そのため、夜間の電気代が安い時間帯にEVに電気を貯めておき、昼間の電気代が高い時間帯にその電気を使うことで電気代の節約が可能です。
また、停電時でもEVから家庭へ電気を供給できるため、非常用電源として災害の備えにもなります。
このようにV2Hは家庭での電気利用を効率化でき、停電対策にもなる便利な機器です。
下の表はV2Hの関連用語とその説明です。
【V2Hの関連用語説明】
EV(電気自動車) | 電気をエネルギーとして走る自動車。CO2を排出しないため環境にやさしい |
V2H(Vehicle to Home) | EVに充電した電気を家庭用として自宅で使えるようにする装置 |
PHEV(プラグインハイブリッド車) | ガソリンと電気をエネルギーとして走るハイブリッド車に充電機能を加えた自動車。電気で走れる距離が長くなっている |
蓄電池 | 太陽光パネルで発電した電気や、電力会社から購入した電気を貯める機能を持った機器。貯めた電気は必要なときに自由に使える |
太陽光パネル | 太陽光エネルギーから電気を作り出す機器。CO2を排出せずに発電できるため、環境にやさしい |
これらの用語を踏まえて、V2Hについてより詳しく解説していきます。
v2hと太陽光パネルで何ができるの?
V2HはEVに貯めた電気を家庭内に供給できるようにするため、蓄電池と同じ機能を果たせます。
そのため、太陽光パネルとの相性がよく、V2Hと太陽光パネルを組み合わせると以下の2つのことができます。
- 車の充電に使う電気代が格安になる
- 電気を貯められる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
車の充電に使う電気代が格安になる
太陽光パネルで発電した電気でEVを充電すると、電気代が格安になります。なぜなら、太陽光パネルで発電した電気は無料で使えるからです。
では、どれくらい電気代を節約できるのかを全国家庭電気製品公正取引協議会が公表している全国の電気料金の目安単価「31円/kWh(税込)」を使って計算してみましょう。(参照1)
国産EVのバッテリー容量をもとに、充電が0%の状態から満充電までかかる電気代は以下の通りです。
【EVの満充電にかかる電気代】
車種 | バッテリー容量 | 満充電にかかる電気代 |
日産「サクラ」 | 20kWh | 620円 |
日産「リーフ」 | 40kWhか60kWh | 40kWh:1240円 60kWh:1860円 |
例えば、日産「リーフ」(60kWh)は一充電で450km走行可能です。年間の走行距離が1万kmの場合、約23回満充電する必要があります。
満充電にかかる電気代が1860円のため、電気代は年間42780円かかる計算です。実際には走行だけでなく車内の空調にも電気を使うため、それを考慮すると年間で5万円以上はかかります。
よって、太陽光パネルで発電した電気のみでEVの充電ができれば、年間で5万円以上の電気代の節約になるのです。
ただし、実際には太陽光パネルだけでなく自宅の電源からの充電と併用することになるため、電力会社から購入しないで済んだ分の電気代が節約になると考えましょう。
電気を貯められる
V2HがあるとEVを家庭用の電気を貯める機器として使えます。太陽光パネルの発電量が増える昼間に発電した電気をEVに貯めておけば、夜は電力会社から電気を購入せずにEVから電気を使えるため電気代の節約になります。
EVに貯めた電気は停電時にも使えるため、非常用電源として災害の備えにもなり安心です。1世帯あたりの1日の電力消費を約12kWhとすると、60kWhのバッテリーを搭載しているEVであれば4日間は暮らせるでしょう。
また、太陽光パネルは設置して10年経つと売電価格が下がってしまうため、できるだけ自家消費をした方がお得になります。
太陽光パネルで発電した電気をEVに貯められると、家庭で自家消費できる量が増えるため、長期的に見てもV2Hと太陽光パネルの相性はよいといえます。
v2hと蓄電池はどちらがいい?
V2Hと蓄電池は同じような役割を果たしますが、どちらを選ぶとよいのか気になりますよね。
まずは、基本的な性能を下の表で見ていきましょう。
【V2Hと蓄電池の性能】
V2H(EVの場合) | 蓄電池(家庭用) | |
容量 | 20kWh~ | 1kWh~16kWh |
充電時間 | 8時間~13時間 | 1時間~8時間 |
サイズ(幅×奥行×高さ) | 約80×33×85cm(ニチコン) | 約70×36×60cm(パナソニック) |
設置費用 | 約80万円~ | 約100万円~ |
V2Hと蓄電池は容量と充電時間に大きな違いがあります。家庭でどれくらい電気を貯めたいのかによってどちらが適しているかが変わってくるでしょう。
また、太陽光パネルの発電量やEVを既に所有しているのかも影響するため、V2Hと蓄電池のどちらがいいかは場合によるといえます。
そのため、それぞれのメリットと違いを考慮して選ぶのがおすすめです。V2Hと蓄電池のメリットを以下にまとめていますので、見ていきましょう。
【V2Hのメリット】
- 蓄電池よりも容量が大きい
- 非常用電源として蓄電池より長い日数もつ
- 家庭用の電源から車に充電するよりも充電時間が短い
【蓄電池のメリット】
- EVやPHEVを所有していなくても導入できる
- 車で外出中でも電気を貯められる
V2Hは容量が大きく、EVへの充電が早くなります。蓄電池はEVに依存しないため、いつでも電気を貯めることができます。これらのメリットを踏まえて、それぞれのライフスタイルに合ったものを選ぶとよいでしょう。
V2Hの費用対効果はどのくらい?
V2Hの設置費用は約80万円以上かかります。EVやPHEVを所有していない場合は、車の購入費用として追加で約200万円以上必要になります。
購入する場合、初期費用として少なくても300万ほどかかってきますが、長期的に見るとV2Hの費用対効果は高いです。
なぜなら、電気の利用を効率化できるからです。例えば、夜間の電気料金が安い時間帯にEVに電気を充電し、昼間に貯めた電気を使えば電気代の節約になります。
また、太陽光パネルの発電量が家庭での電気の使用量を上回っても、余剰電力をEVに貯めておけるため、無駄にしなくて済みます。EVは蓄電池よりも容量が大きいため、電気代の節約効果はより高くなるでしょう。
車の維持費に関してもメリットがあります。EVを走らせるための電気代はガソリン車を走らせるための燃料代よりも安いです。
電気代の節約効果と車の燃料費の削減効果があるため、V2Hの費用対効果は高いといえます。
v2h×太陽光発電は環境にいい?
V2Hと太陽光発電を組み合わせると、CO2の削減に貢献できるため環境にいいです。
なぜ環境にいいのかというと、CO2は地球温暖化の原因になるからです。地球温暖化は環境に被害を与えるため、CO2を削減すると環境を守ることに繋がります。
ガソリン車は走行する際にCO2を排出してしまいますが、EVは電気を使って走るためCO2を排出しません。ただし、電力会社から購入する電気は化石燃料を使った火力発電により作られているため、電気を作る過程でCO2が排出されています。
そのため、電力会社からの電気ではなく再生可能エネルギーを使った太陽光発電による電気を使うことで、電気を作る過程でもCO2を排出しないので、エネルギー面でもCO2の削減に貢献できるのです。
EVやPHEVの普及が進むにつれて、走行時のCO2排出量を減らすだけでなく、エネルギー面でもCO2排出を減らすことが重要視されてきています。
V2Hと太陽光パネルを組み合わせれば、走行時とエネルギー面の両方でCO2を削減できるため、今後さらに需要が高まるでしょう。
V2Hに補助金はつかえる?
2024年現在、V2Hに補助金は使えます。補助金を活用すると、費用対効果がさらに高くなるためおすすめです。
国と地方自治体に補助金制度があるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。
国のV2Hの補助金
令和6年度の国のV2Hを対象とした補助金制度には「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」があります。(参照2)
経済産業省が導入している補助金で、V2Hの購入費だけでなく工事費にも補助があります。また、同時にEVの購入も考えている場合は、EVにも補助金があるため活用しましょう。
EVの補助金制度には「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」があります。こちらも経済産業省が導入している補助金です。(参照3)
それぞれの補助金制度の概要を下の表にまとめました。
【経済産業省のV2HとEVを対象とした補助金(個人)】
補助金の名称 | 対象 | 補助金額 |
クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金 | V2H機器の購入費と設置する際の工事費 ※EV等を保有または発注済みの場合に限る | ・V2H機器の購入費の50% ※上限30万 ・工事費の100% ※上限15万 |
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金 | EV、軽EV、PHEV、FCV(燃料電池自動車) ※中古車は対象外 | EV:最大85万円 軽EV:最大55万円 PHEV:最大55万円 FCV:最大255万円 |
2つの補助金制度を活用すると、約100万の補助金を受け取れる場合もあります。年度により補助金制度の内容は変わるため、V2HとEVの導入をする際には事前に確認するとよいでしょう。
参照2:令和5年度補正予算・令和6年度当初予算「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」 経済産業省
参照3:令和5年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」地方自治体の補助金 経済産業省
地方自治体のV2Hの補助金
地方自治体のV2Hの補助金制度はお住いの地域によって変わります。2024年度にV2Hを対象とした補助金を交付している地方自治体の例を下の表から見ていきましょう。
地方自治体 | 補助金の名称 | V2Hの補助金額 |
東京都 | 戸建住宅におけるV2H普及促進事業(参照4) | 機器費と工事費の50% ※上限50万 機器費と工事費の100%(太陽光発電システム・EV又はPHVが揃う場合) ※上限100万 |
埼玉県さいたま市 | 令和6年度「スマートホーム推進・創って減らす」機器設置補助金(参照5) | 50000円 |
福岡県福岡市 | 令和6年度 福岡市住宅用エネルギーシステム導入支援事業(参照6) | 機器費の50% ※上限20万 |
V2Hの補助金は都道府県や市区町村で交付していて、国の補助金と併用して受け取れる場合もあります。
自治体によって内容が変わるため、V2Hの導入をする際にはお住いの都道府県と市区町村に問い合わせることをおすすめします。
参照4:【令和6年度】戸建住宅におけるV2H普及促進事業 クール・ネット東京
参照5:令和6年度「スマートホーム推進・創って減らす」機器設置補助金 さいたま市役所
参照6:令和6年度 福岡市住宅用エネルギーシステム導入支援事業 福岡市役所
V2Hとパワーコンディショナー(パワコン)
V2Hや太陽光パネル、蓄電池といったそれぞれの機器にはパワーコンディショナーが必要になります。パワーコンディショナー(パワコン)とは直流の電気を家庭で使える交流の電気に変換する装置です。
私たちが家庭内で使っている電気は交流であるのに対し、太陽光パネルで発電した電気やEVバッテリーに貯められている電気は直流です。
直流の電気はそのまま使うことができないため、直流を交流に変換できるパワーコンディショナーが必要になります。
パワーコンディショナーにはV2Hや太陽光パネルなどのそれぞれの機器に対応するものと、1台で複数の機器に対応できる多機能パワコンがあります。
多機能パワコンはV2Hと太陽光パネル、蓄電池の間を直流でつなぐため、電気の変換ロスを抑えられ、太陽光発電で作った電気をより効率的に使える便利な機器です。
そのため、V2Hと一緒に太陽光パネルや蓄電池も使いたい場合は、1台で対応できる多機能パワコンがおすすめです。
V2Hを太陽光なしで利用するのは?
V2HにはEVやPHEVが必須ですが、太陽光パネルがなくても利用できます。ただし、太陽光発電がないとメリットが減ってしまう点に注意しましょう。
V2Hを単体で使う場合のメリットは以下の3つです。
- EVやPHEVの充電が早くなる
- 電気代が安い時間帯に車に充電した電気を、電気が高い時間帯に自家消費できる
- 停電時の緊急用電源になる
太陽光パネルがなくても、EVの充電が早くなったり停電時の緊急用電源になったりするなどのメリットは変わりません。
しかし、太陽光発電による無料の電気がないため、電気代の節約に関してはメリットが減ってしまいます。
また、電力会社と契約している電気プランによって電気代を節約できるかが変わってきます。
例えば、早朝や夜間の電気代が安くなる電気プランであれば電気代の節約が可能です。電気代が安い時間帯の電気をEVに充電すれば、電気代が高くなる昼間にその電気を使えます。
安い時間帯の電力で昼間の電気を賄えるため、電気料金を削減できるのです。
EVを所有していて、太陽光発電なしでV2Hの導入を考えている方は電気会社との契約や昼間の消費電力を確認することをおすすめします。
V2Hの見積もりと選び方
V2Hの導入には機器の購入費と設置する際の工事費がかかります。予算としてはV2H機器が約50万以上で工事費は約30万〜40万と、安くても約80万以上かかる計算です。
ただし、国や地方自治体の補助金があるため、実際にかかる費用は少なくなります。
V2H機器の種類や自宅の状況などによって費用は変わってくるため、正確な費用を知りたい場合は業者に見積もりの依頼をしましょう。
業者に依頼をすると、施工会社が自宅の設置場所や配線を確認し工事費の見積もりをします。ここにV2H本体の価格を加えればおおよその予算がわかります。
3種類のV2Hの価格と特徴を下の表に簡単にまとめていますので、V2Hの予算を組む際の参考にしてください。
機種 | 特徴 | メーカー価格 |
ニチコン「パワー・ステーションVCG-663CN7(スタンダードモデル)」 | ・シンプルな機能のため他のV2Hよりもリーズナブル ・車へは200V・最大6kWで充電可能 | 548,000円 |
ニチコン「パワー・ステーションVCG-666CN7(プレミアモデル)」 | ・停電時の出力がスタンダードモデルよりも高い ・スマホでの操作も可能 | 1,280,000円 |
シャープ「JH-WE2301」 | ・太陽光発電・EV・蓄電池の3連携が可能 ・壁に取り付けられるコンパクトなサイズ | 1,650,000円 |
V2Hの停電時出力や、他の機器と連携できるかによって価格は大きく変わっていきます。V2Hを単体で導入するのか、蓄電池や太陽光パネルと一緒に活用するかによって選ぶ機種を検討するとよいでしょう。
また、停電時に多くの電気を使いたい場合は、停電時出力が大きいV2Hがおすすめです。
V2Hは国と地方自治体それぞれに補助金制度があるため、受け取れる補助金額も考慮して予算を組むとよいです。
V2Hはリースできる?
V2Hは機器の購入以外にもリース方式で導入できます。リースサービスはV2Hの専門代理店や自動車販売店などで提供しています。
サービスによって料金は変わってきますが、リース代は月々1万3000円ほどです。工事費用込のプランもあり、初期費用0円でV2Hを導入できます。
また、リース契約中なら各種保証がついてくるサービスもあり、機器を購入したときよりも長い保証を受けられます。
ただし、リース期間が10年とすると、13000×12×10=1,560,000円と購入するよりも費用が高くなってしまうため注意が必要です。
購入とリースそれぞれのメリットとデメリットがあるため、V2Hを導入する際には自分に合った選択をするとよいでしょう。
V2Hと太陽光発電で地球と家計にやさしい生活を
V2HはEVやPHEVに貯めた電気を効率よく活用できるため、電気代の節約になったり緊急用電源として災害時の備えになったりします。
また、太陽光パネルと連携すると太陽光発電の電気をEVに貯められ、CO2の削減に貢献できます。
余剰電力を無駄にすることも減るため、V2Hと太陽光パネルは環境にも家計にもやさしい組み合わせといえるでしょう。
V2Hの導入費は高額ですが、国と地方自治体の補助金やリースサービスを活用すれば初期費用を抑えられます。
EVやPHEVの普及とともにV2Hの注目度は高まってきているため、太陽光発電と一緒に導入して、地球と家計にやさしい生活をしてみてはいかがでしょうか。