「太陽光発電の導入から11年目以降は、売電単価が下がるからどうすればいいの?」
住宅用太陽光発電を導入もしくは検討している方は、卒FIT後の売電単価について悩んでいませんか?
FIT制度の固定買取期間が終了する11年目以降(出力10kW未満の場合)は、電力会社各社で独自に定めている売電単価で契約を行うか検討しなければいけません。しかし、卒FIT向けの電力買取プランは、FIT制度の固定買取価格と比較して半額以下の単価になり、売電のメリットを得られるか難しいところです。
この記事では、住宅用太陽光発電の設置から11年目以降に効率よく運用する方法、更に自家消費を行う上でメリットの多いエコキュートの活用について、わかりやすく解説します。
住宅用太陽光発電を検討している方や太陽光発電の設置から11年目に近づいている方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 卒FIT後の買取価格
- エコキュートとの相性
- 自家消費のメリット
卒FITに向けての準備
卒FITとは、FIT制度の適用期間からの卒業、つまり終了という意味です。
FIT制度は、再生可能エネルギーの導入支援に関する国の制度で、一定の期間だけ固定の買取価格で売電をおこなえる制度です。出力10kW未満の太陽光発電でFIT認定を受けた場合は、認定年から10年間固定単価での売電ができます。売電可能な電力は余剰分のみですので、太陽光発電で発電した電気をまず家庭で利用し、余った分を、電力会社で買い取ってもらえるという制度になっています。これを余剰買取方式といいます。
太陽光パネルを家庭に導入する予定がある・またはしている方は、FIT制度の終了する少なくとも2年程度前には卒FITへ向けた準備を進めていきましょう。
具体的には、新たに電力会社の電力買取プランを契約するか、売電を行わずに自家消費のみしていくか、設備を撤去するかなどの検討を行っていくことになります。
FIT終了後の売電価格は6割以下
太陽光発電の売電買取価格は、FIT制度と卒FITで大きく変わります。
FIT制度適応中と11年目以降の太陽光発電に関する買取価格を比べていきましょう。
FIT認定終了後の売電価格は、固定買取価格(FIT制度の買取価格)と比べると6割程度まで下がります。
以下は関東圏の大手電力会社で提供されている卒FIT向けプランと、FIT制度の固定買取価格の例です。
FIT制度適用期間中の固定買取価格 (参照1) | 2024年度にFIT認定を受けた場合1kWhにつき16円 2025年度にFIT認定を受けた場合1kWhにつき15円 |
東京電力(参照2) | 再エネ買取標準プラン(卒FIT向けプラン)1kWhにつき8.5円 |
東京電力の買取標準プランと比較した場合だと、約半額まで下がっています。
このように、卒FIT後の11年目以降は、売電単価がさがり、売電収入も半額近くまで減ってしまいます。
売電収入で太陽光パネルの設置費用を回収したいんだけど、11年目から収入が減っても大丈夫かしら?
太陽光パネルの設置費用は導入からだいたい10年前後で回収できるケースが多いです。
設置前にFIT終了後の売電価格を調べた上でどのように対処していくべきかも考えなくてはいけないのね
参照1:経済産業省資源エネルギー庁
卒FITの買取価格ランキング
太陽光発電のFIT認定から11年目以降も売電を行いたい場合は、卒FIT向けプランの買取価格を比較しておくとよいでしょう。
以下に例として関東圏で卒FIT向けの電力買取プランから、現在、とくに買取価格の高いプランをランキング形式で紹介します。
1位 | エネクスライフサービス1kWhにつき12.5円 TERASELでんきとのセットなら1kWhにつき13.5円 |
2位 | 東急パワーサプライ1kWhにつき12円 |
3位 | ENEOS太陽光買取サービス1kWhにつき11.5円 |
4位 | 丸紅新電力1kWhにつき11円 |
5位 | 東京ガス1kWhにつき10.5円 |
エネクスライフサービスの電力買取プランなら、一般的なプランよりも4円以上高い12.5円でFIT終了後の太陽光発電の売電を継続することが可能です。
また、電気料金プランの切り替えもあわせて検討している方は、電力会社TERASELでんきへの切り替えで単価を1円引き上げた13.5円での売電も始められるようになります。
なおFIT制度の買取金額は毎年一回発表され固定ですが、FIT後の売電価格は各電力会社がそれぞれのタイミングで発表・変更をするため、こまめに確認が必要です。
参照3:伊藤忠エネクスグループ、東急パワーサプライ、ENEOS Power株式会社、丸紅新電力
FIT終了後の売電手続き
FIT制度の終了する11年目以降も売電を継続したい場合は、電力買取プランを取り扱っている電力会社へ契約手続きを進めておくことが大切です。
FIT制度中は、売電申請手続きの中で、大手電力会社に電力買取をしてもらう事になっています。
一方、FIT終了後は、自身で電力会社と契約手続きを進めなければ、FIT中のように太陽光発電で発電した電気を売電できません。そのため、卒FIT前に電力買取プランを取り扱っている大手電力会社や新電力を調べておくことが、スムーズに切り替える上で重要です。
11年目(FIT後)からは自家消費を増やすのがおすすめ
家庭に太陽光パネルを設置する場合は、売電収入よりも自家消費に力を入れるのがおすすめです。なぜなら、FIT制度中かFIT終了後に関わらず、電気の買取価格は、使用する電気料金(電力量料金単価)より安く設定されているからです。
そのため、お得に太陽光発電を活用していくには、電力会社へ売電するよりも自家消費といって自分の家の中で自給自足するほうが、経済的にお得になっています。
それでは、具体的にどのようにして自家消費を増やすのかを説明します。
①エコキュートの活用
太陽光発電の導入から11年目以降は、エコキュートの導入がおすすめです。
エコキュートは、大気中に含まれている熱を活用したヒートポンプ式の電気給湯器で、環境にも配慮された住宅設備になっています。また、オール電化プランをはじめとした、夜間のみ電力量料金単価の安い電気料金プランと組み合わせることで、給湯にかかるコストを抑えられるのが嬉しいポイントです。
またエコキュートは電気でお湯を沸かす仕組みのため、お風呂や料理のためにお湯を沸かす電気代の大半を太陽光発電でまかなうことができます。
ここでは最近特に注目されている太陽光発電との連携機能があるエコキュートを紹介します。
ダイキン・おひさまエコキュート
おひさまエコキュートには、昼間シフト機能という設定があります。太陽光発電の発電量が多い日中に沸き上げ量を増やし、電気料金を削減します。夜間の沸き上げ量は抑えられる設計になっており、沸き上げ時刻の細かな調整にも対応しています。
手動設定が気にならず、日中の沸き上げ量をこまめに調整したい人には、使いやすく便利な機能に感じられるでしょう。
三菱電機 ・お天気リンクAI
三菱電機のエコキュートS、A、P、EXシリーズには、太陽光発電連携モード・お電気リンクAIが搭載されています。
お天気リンクAIは三菱HEMSの機能で、天気予報や過去の発電実績からこれからの発電量を予測し、計算に基づいて夜間の沸き上げ量を抑えたり太陽光発電の余剰電力で沸き上げをおこなったりしてくれます。
日中の沸き上げに必要な電力を計算してくれるので、無駄な電力を残さず、夜間の沸き上げに伴う電気料金負担を削減できるのが、お天気リンクAIのメリットです。
手動設定で沸き上げ時刻や沸き上げ量の調整をしたくない場合は、特に便利で使いやすい機能になっています
パナソニック ・ソーラーチャージ
パナソニックから販売されているエコキュートのうちJP、J、N、C、W、S、NS、H、FP、F、LS、Lシリーズは、太陽光発電との連携機能を使用することが可能です。
連携機能の中には、ソーラーチャージという余剰電力を効率的に活用するためのサポート機能も含まれています。
ソーラーチャージは、太陽光発電の電気を家庭内で消費したのちに余った電力をエコキュートの沸き上げに用いる機能で、夜間の湧き上げ量および電気代負担を削減できます。さらに発電量の少ない日は沸き上げ量を抑えてくれるので、消費電力を削減しながら効率的に自家消費することが可能です。
さらにエコキュートの操作パネルやスマートHEMSのAiSEG2、専用のアプリなどさまざまな機器との連携も可能です。
②蓄電池
家庭用蓄電池を導入することで、より効率的な自家消費が可能になります。
住宅用太陽光発電は、日中に発電した電気を貯めておくことができません。そのため、蓄電池がないと夜間や消費電力の多い時間帯には、電気会社から電気を買う必要があります。そこで、蓄電池があれば、昼間に自宅で発電した電気を貯めて置き、夜間も電気を購入せずにつかうことができます。
③EV
EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)をお持ちの方は、太陽光発電とV2H×EVやPHEVを連携させることができます。
EVやPHEVの車載バッテリーに貯められる電気は直流です。家電製品や住宅設備などは、交流の電気で稼働するよう設計されており、EVやPHEVの電気をそのまま使うことができません。そこでV2Hを通すことで、EV・PHEVに貯めておいた太陽光発電の余剰電力を自家消費できるようになり、電気料金削減効果を高められます。
④HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)
HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)は、太陽光発電を含めたエネルギーの見える化と管理をする設備です。
家庭内の電気使用量を計測し、モニターで常に確認をすることができます。さらにHEMS対応機器と連携し、家電製品の使用頻度や使用時間を記録、エアコンや照明などの自動制御を行ってくれます。
太陽光発電で発電した電気をもっとも効率的な方法で自動で活用できるため、省エネや環境保護の観点からも、HEMSには今後さらに注目が集まると予想されています。
11年目から太陽光パネルを撤去するべきか
太陽光発電の設置から11年を経過した段階で、太陽光パネルを撤去するのはもったいない選択です。
太陽光パネルは、短くても20年~25年、長ければ30年は使うことができます。。また、太陽光パネルを含むシステム一式を撤去するためには、施工業者や産業廃棄物専門の業者へ依頼する必要があり、撤去・廃棄費用の負担もかかります。
そのため、FIT制度の終了する11年目に太陽光パネルを撤去するより、エコキュートなどを組み合わせながら自家消費をメインに切り替えていくのがおすすめです。
FIT制度はなぜ10年で終わるの?
FIT制度は再生可能エネルギーの普及や環境負荷軽減を目的に制定されています。太陽光パネルの初期設置費用の回収は10年程度で完了できるため、住宅用太陽光発電の固定買取期間は10年とされています。
日本のエネルギー自給率は13.4%と低く、化石燃料などのエネルギーを海外からの輸入に頼っています。しかし、火力発電に必要な化石燃料は、燃焼時に気候変動の原因とされる温室効果ガスを発生させます。
そのため、化石燃料以外のエネルギーの普及・エネルギーの自給自足は、地球環境や日本の社会にとって重要な課題です。
しかし、再生可能エネルギーの導入コストは、高い傾向で推移しています。そこで国は、FIT制度によって再生可能エネルギー設備の普及促進を図っています。
このようにFIT制度は売電収入を伸ばすための制度ではないので、自家消費をベースにした運用方法を考えていくのが大切です。
注目されている新しい電力制度
近年、太陽光発電に関する国の制度の中で、新たにFIPやP2P電力取引といった制度も出てきました。
それでは、FIP制度やP2P電力取引についてくわしく見ていきましょう。
FIP制度
FIP制度(フィードインプレミアム、Feed-in-Premium)は、電力市場の価格と連動しながら売電単価が変動していく制度です。
電力市場の売電単価は、電力の需要や供給量で常に変化しています。FIP制度の売電単価は、電力市場の価格にプレミアム価格という補助金を上乗せしたもので、通常の電力取引より補助金分だけ利益を出しやすいといえます。
また、電力需要の上がりやすい時間帯は売電単価も上昇するため、売電収入を増やしやすいメリットもあります。
P2P電力取引
P2P電力取引は、ブロックチェーンなどの技術を活用して、個人でも電力の売買を行える次世代の電力システムを指しています。
たとえば、個人の住宅に設置されている太陽光パネルや蓄電池といった分散型の電源を、他の個人や企業へ電力を供給し、さらに販売していけるのが、P2P電力取引のメリットです。
これらのシステムは卒FIT後も柔軟に売電を進められる可能性があり、売電収入重視の方にとって注目されています。ただし、2024年時点では実証実験の段階で、今すぐ個人も取り組めるものではありません。
そのため、太陽光発電の設置から11年目以降の方は、自家消費について考えていくのがおすすめです。
まとめ:太陽光売電・11年目以降の準備はお早めに
家庭に太陽光パネルを設置する場合は、一般的にFIT制度を活用しながら初期費用の回収・電気料金の削減を進めていきます。しかし、住宅用太陽光発電の固定買取期間は10年なので、11年目以降から固定単価での売電を行えません。卒FIT向けの電力買取プランで提示されている売電単価は、固定買取価格に対して半額程度の値段となってしまいます。
そのため、太陽光発電を設置している方やこれから設置する方は、卒FIT後の運用方法について考えておくことが大切です。
おすすめの方法は、エコキュートと太陽光発電を組み合わせたもので、自家消費したのちに余った電力をエコキュートの沸き上げに使用します。エコキュートは環境にやさしい住宅設備なので、環境面でも太陽光発電と相性がいいといえます。