近年、太陽光発電においてペロブスカイト太陽電池に注目が集まっています。ペロブスカイトとは、簡単にいうと次世代の太陽電池です。2025年頃に実用化が始まると業界では予想されてきました。
ペロブスカイト太陽電池は従来の太陽電池よりも柔軟性があるため、再生可能エネルギー拡大の切り札として期待されていますが、実用化には課題もあります。
この記事では、ペロブスカイト太陽電池はどこまで開発が進んでいるのか、実用化はいつになるのか、現状のシリコン型を今買うべきかなどを解説します。
太陽光発電の導入を検討していて、ペロブスカイト太陽電池の販売まで待ったほうがいいのか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
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ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池とは、これまでのシリコン型太陽電池とは違う材料を使って製造する新しい太陽電池です。以下のような特徴をもっています。
- 変換効率が高い
- 製造コストが安い
- 軽くて柔らかい
それぞれの特徴について詳しく説明していきますね。
変換効率が高い
ペロブスカイト太陽電池は家庭用で使われている従来のシリコン型太陽電池よりも高い変換効率を実現しています。自宅に設置する太陽電池の変換効率は、20%前後のものが多めです。2024年11月時点で、ペロブスカイト太陽光電池は26.7%の発電効率を記録しています。(参照1)
開発当初の変換効率は3~4%と低い数値でしたが、研究開発が進んだことで2024年にはシリコン型太陽電池に匹敵する数値まで性能が向上しました。
また、従来のシリコン型太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を重ねたタンデム型ペロブスカイト太陽光電池では、研究レベルで33.7%の変換効率が報告されています。(参照2)
世界的に開発が進められているため、今後もペロブスカイト太陽電池の変換効率が向上していくと予想されます。
製造コストが安い
ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池に比べて製造コストを削減できる可能性があります。フィルムに材料を塗布・印刷して製造するため、少ない工程で大量生産できるからです。
また、ペロブスカイト太陽電池にはレアメタルが必要ありません。従来の太陽電池は日本国内でほとんど産出できないレアメタルを材料に使っているため、材料は海外からの輸入に依存しています。
一方で、ペロブスカイト太陽電池の主要な原料は、日本が世界シェア第2位のヨウ素です。国内で材料を調達して製造できます。
材料コストを抑えながら大量生産できるため、ペロブスカイト太陽電池は日本の再生エネルギー拡大の切り札ともいわれています。
軽くて柔らかい
軽くて柔らかいのもペロブスカイト太陽電池の特徴です。薄いフィルムに材料を塗布・印刷して製造できるため、従来の太陽電池よりも薄型で軽量になります。
曲げたり形状を変えたりすることも可能です。シリコン型太陽電池と比べて非常に軽いため、耐久性の問題から太陽光パネルを設置できなかった場所でも、ペロブスカイト太陽電池ならば設置できる可能性があります。
たとえば、建物の壁面やアーチ状の場所、小さい工場の屋根などにも設置が可能になります。今まで設置できなかった場所を有効活用できるため、太陽光発電のさらなる普及が期待されるでしょう。
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ペロブスカイト太陽電池の仕組み

ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造をもつ化合物を発電層に使用しています。

そもそもペロブスカイトって何?



ペロブスカイト(perovskite)とは、灰チタン石(カイチタンセキ)や灰チタン石と同じ結晶構造をもつ物質のことです。立方体のような形状の中に3種類のイオンや原子が配置されています



その構造をもつ物質を発電層に取り入れたのがペロブスカイト太陽電池ってことね



そうです。ペロブスカイト太陽電池は2009年に神奈川県横浜市にある桐蔭横浜大学の宮坂力教授によって発明されました



ペロブスカイト太陽電池って日本発の技術だったのね!
ペロブスカイト太陽電池の構造は上からフィルム、発電層、電極、フィルムの順番になっているのが特徴です。光が当たると発電層にあるペロブスカイト層が、光エネルギーを吸収して発電します。日陰や室内などの光が弱い場所でも発電が可能です。
ペロブスカイト太陽電池とシリコン型太陽光電池の比較
ペロブスカイト太陽電池とシリコン型太陽電池の性能や価格を比較すると、下表のようにまとめられます。
ペロブスカイト | シリコン型 | |
発電効率(最高記録) | 26.7% ※タンデム型は30%以上 | ヘテロ接合型シリコン:27.3% 結晶シリコン:26.1% |
重さ | 約1~3kg/㎡ | 約10~15kg/㎡ |
耐久性(寿命) | 5年~10年 | 20年~30年 |
価格 | 20.4万円/kW | 29.5万円/kW |
その他 | 柔らかく薄いため曲げられる | 固くて丈夫だが曲げられない |
単体では発電効率の最高記録はほぼ同じです。ペロブスカイトにシリコン型を組み合わせたタンデム型であれば、30%以上の発電効率が実現しており、理論上は40%以上を目指せるといわれています。
ただし、この発電効率は太陽電池の最小単位であるセルで実現した数値のため、セルを複数組み合わせた太陽光パネルになると発電効率は落ちてしまいます。家庭用として広く使われているシリコン型の太陽光パネルだと、20%前後のものがほとんどです。
ペロブスカイトの重さはシリコン型と比べて非常に軽くなっています。柔らかく薄いため曲げられます。シリコン型は曲げられませんが、ペロブスカイトより耐久性が高めです。2025年現在では、ペロブスカイトの寿命は5年〜10年といわれており、シリコン型のほうが2〜3倍ほど長持ちします。
経済産業省のデータによると、2024年におけるシリコン型の太陽光パネルの価格は、1kWあたり29.5万円が目安です。(参照3)
一方でペロブスカイトは2024年時点のメーカーのコスト見通しを踏まえると、1kWあたり20.4万円になると予測されています。そのうち設備費は14万円ほどです。研究開発を進めることで、日本政府はペロブスカイトの設備費を1kWあたり6万円まで抑えることを目標にしています。(参照4)
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ペロブスカイト太陽電池のデメリットは?
ペロブスカイト太陽電池は製造コストの安さや柔軟性により注目が高まっていますが、デメリットもいくつかあります。主なデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 有害物質の鉛が含まれている
- 耐久性が弱い
- 発電が安定しない
それぞれ詳しく説明していきます。
有害物質の鉛が含まれている
ペロブスカイト太陽電池には有害物質の鉛が使われています。1㎡に含まれる鉛の量はおよそ0.4 gといわれています。鉛は体内に蓄積しやすく、神経や内臓に悪影響を及ぼす物質です。そのため、日本では鉛の廃棄や排出が法律で制限されています。
たとえば、土壌汚染対策法では土壌の鉛は1Lにつき0.01mg以下であることが基準として定められています。(参照5)
ペロブスカイト太陽電池が破損したり不法に廃棄されたりすると、基準を上回る鉛が土壌や河川に漏出してしまい、環境汚染につながる可能性があるでしょう。有害な物質をどのように処理するのかが課題になっています。
課題解決のために、鉛を他の物質に代替したペロブスカイト太陽電池の開発も進んでいます。しかし、鉛を使ったものと比べて発電効率が低くなっているのが現状です。
今後の研究により安全性と機能性を両立できるペロブスカイト太陽電池の開発が期待されます。
参照5:環境省
耐久性が弱い
ペロブスカイト太陽電池の耐久性(寿命)は5年~10年ほどと、シリコン型太陽電池よりも短めです。長く使えないため頻繁に廃棄処理やリサイクルが必要になり、環境に負荷がかかる、買い替えのコストがかかるなどのデメリットがあります。
ただし、耐久性を向上させる研究開発が進んでおり、ペロブスカイト太陽電池の寿命は以前よりも長くなっています。
20年以上使用可能になるとの研究結果もあるため、数年後にはシリコン型のように20年間使い続けられるペロブスカイト太陽電池が開発される可能性があるでしょう。(参照6)
参照6:神戸新聞NEXT
発電が安定しない
太陽光パネルのサイズで製造した場合、ペロブスカイト太陽電池は発電が安定しなくなります。1cm×1cmほどの面積であれば十分な発電量が期待できますが、面積が広くなると性能にばらつきがでるからです。
研究開発により、ペロブスカイト太陽電池の発電効率は年々向上しています。そのため、研究が進めば、広い面積でも発電が安定するペロブスカイト太陽電池が開発されることが予想されます。
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2025年ペロブスカイト太陽電池は実用化される?


現在、日本国内ではペロブスカイト太陽電池の実用化を目指した実証実験が始まっています。パナソニックはガラスと一体化したペロブスカイト太陽電池の実証実験を2023年8月から神奈川県藤沢市で開始しています。(参照7)
横浜市では、2024年9月28日から11月28日までフィルム型のペロブスカイト太陽電池を公共施設に設置していました。2025年にはビルの壁面への設置を想定した実証実験を開始します。(参照8)
また、フィルム型のペロブスカイト太陽電池を開発している積水化学工業は、2024年12月14日に2025年の事業化を明言しています。(参照9)
国外でもペロブスカイト太陽電池の研究開発が進められており、量産に向けた動きが見られる状況です。中国やポーランドでは、2024年に生産能力を向上させる計画を公表しています。
このように国内外でペロブスカイト太陽電池の実証実験や量産に向けた取り組みが進んでいるため、日本では2025年中に小規模で実用化される可能性があると考えられます。
参照7:資源エネルギー庁
参照8:横浜市
参照9:読売新聞オンライン
ペロブスカイト太陽電池を一般家庭で購入できるのはいつ?
ペロブスカイト太陽電池が実用化されるとしても、公共機関や企業ビルなどに取り入れることから始まります。現在の技術では、メーカーが小売店で販売し、一般家庭での購入ができるまでには至っていません。
一般家庭に普及するのは、2028年〜2030年頃との予想もありますが、明確な根拠はないのが現状です。また、販売開始直後では、耐久性などの検証が実際の家庭では十分に行われていないといえるため、一般に広がるのは、まだまだ先だと考えられます。



太陽光パネルの設置を検討しているのだけど、ペロブスカイト太陽電池が購入できるようになるまで待ったほうがいいのかしら?



現在の太陽光パネルを設置できる家庭状況であれば、ペロブスカイト太陽電池の実用化を待たなくてもよいでしょう。
太陽光パネルは携帯電話のように毎年新型が販売されるわけではありません。販売まで待つ場合、数年間太陽光パネルのメリットを得られなくなります。既存の太陽光パネルでも経済的メリットは十分にあるため、あえてペロブスカイト太陽電池の実用化を待つ必要はないといえるでしょう



経済的メリットがあるならば、早めに導入を検討したほうがよさそうね
2025年現在は、新築の太陽光パネル設置が義務化された自治体があります。その影響もあり、太陽光パネルの設置に手厚い補助金制度を用意している地域もあるため、補助金があるうちに購入するのがおすすめです。
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ペロブスカイト太陽電池を開発しているメーカーは?


ペロブスカイト太陽電池を開発している日本のメーカーには、パナソニック、カネカ、東芝などがあります。各メーカーの2025年現在の進捗を簡単に紹介します。
パナソニック
パナソニックは、ガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池を開発し、神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン内に建てられたモデルハウスで実証実験を開始しています。
ペロブスカイト太陽電池をまち・くらしに調和する「発電するガラス」と位置づけ、さまざまな建築物への利用を目指しています。
「発電するガラス」はサイズ、透過度、デザインのカスタマイズに対応可能です。従来の結晶シリコン型太陽電池と同等の発電効率があり、実用サイズでは世界最高レベルの発電効率(17.9%)を達成しています。
参照10:パナソニックホールディングス株式会社
カネカ
カネカは、約10μm厚の超薄型ペロブスカイト太陽電池を開発しており、フィルム型ペロブスカイト太陽電池における世界最高水準の20%に迫る変換効率を実現しました。
サイズフリー・超薄型の特長を活かした実用化を目指しており、2025年には事業化することを明言しています。
参照11:株式会社カネカ
東芝
東芝は、2023年2月11日に東急田園都市線・青葉台駅正面口改札前自由通路にて実施するペロブスカイト太陽電池の先行実証実験向けに、大面積のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を提供しています。
提供したペロブスカイト太陽電池は、フィルム型において大面積のものとしては世界最高のエネルギー変換効率(16.6%)を記録しています。
屋内の光での発電量を検証し、将来的には建物内や車両にも活用できるよう開発を進めています。
参照12:東芝エネルギーシステムズ株式会社
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まとめ:ペロブスカイト太陽電池が広まるには時間がかかる
ペロブスカイト太陽電池は、高い変換効率、低い製造コスト、軽量・柔軟性など、次世代の太陽電池として多くの魅力的な特徴を持っています。実用化に向けて、世界中の企業や研究機関が開発を進めており、私たちの生活に大きな変化をもたらす可能性があるでしょう。
しかし、実用化に向けては、耐久性、安全性、発電の安定性など、克服すべき課題も残されています。まだまだ開発途中の技術であるため、一般家庭に広まるまでには時間がかかるでしょう。
太陽光発電の導入を検討している場合は、ペロブスカイト太陽電池の実用化を無理に待つ必要はありません。既存の太陽光パネルでも電気代の節約になります。
次世代の太陽電池が販売するまでの数年間、経済的メリットが得られないのはもったいないため、補助金を受け取れるうちに太陽光パネルの設置を検討するのがおすすめです。
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