新築住宅を建てるときに、太陽光発電を導入するか迷う人は多いです。
結論からいうと、新築住宅を建てるときには、太陽光発電を設置することがおすすめです。この記事では、新築時に太陽光発電を設置するときに知っておきたい知識に加え、新築時に太陽光発電が必要な理由を解説します。
また「住んだ後にじっくり太陽光発電について考えたい」という人に向けて、新築時と後付けの場合の比較もしています。
難しい言葉を使わずに、わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。この記事を読むことで、「新築時に太陽光発電が必要か」を検討する手助けになります。
- 新築住宅を建てるときに太陽光発電が必要な理由
- 新築住宅で太陽光発電を設置するときの費用
- 太陽光発電を後付けするときの費用
- 新築時に太陽光発電を設置するメリットとデメリット
- 太陽光発電を後付けするメリット
- 太陽光発電にかかる固定資産税
新築住宅に太陽光発電が必要な理由
新築住宅に太陽光発電が必要な理由は、以下の3つです。
- 電気代の高騰に備えられる
- 環境負荷の軽減
- 後付けよりも手間とコストを抑えられる
ひとつずつ見ていきましょう。
①電気代の高騰に備える
最近、電気代が高くなったと感じることはないでしょうか。これから解説するさまざまな要因で電気代は高くなります。
今後、今よりも電気代が高くならないという保証はどこにもなく、むしろ燃料の不足などの理由から電気代が高くなっていくことが予想されています。
日本のエネルギー自給率
電気代が高騰する理由の一つ目は、日本のエネルギー自給率の低さです。
日本で使用する電気の多くは、火力発電で作られています。火力発電は、天然ガス・石油・石炭を発電をするための燃料として使用しており、燃料が値上がりすることによって電気代が高くなります。
日本の天然ガス・石油・石炭の自給率は13%で、使用する燃料のほとんどを輸入に頼っている状況です。(参照1)燃料の自給率が低い日本では、自国で燃料の価格をコントロールできない、つまり電気代も変動しづづけることになります
この先の将来、世界各国でどのようなことが起こるかは、誰にも予想できません。予想外の事態で、いきなり燃料費が高騰し、急激に電気代が高騰する可能性もゼロではないのが日本の現状です。
参照1:第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰
燃料の高騰
二つ目は、世界的な燃料の高騰です。燃料の自給率が低い日本では、海外で起こる問題や燃料の価格高騰によってダイレクトに影響を受けてしまいます。
2024年現在、日本だけではなく世界的に燃料の価格が高騰しています。世界的に燃料の価格が高騰している理由は、ロシアのウクライナ侵略が理由の一つにあります。
ロシアは、天然ガス・石油・石炭の生産量が多く、世界各国に燃料の輸出を続けてきました。しかし、2022年のウクライナ侵略により、世界の状況が大きく変わり、エネルギー市場も大きく変動しました。
ロシアによるウクライナ侵略をきっかけに、EUをはじめとした世界各国でロシア産燃料の輸入を中止したり、減らしたりする動きが始まっています。多くの国が生産量が多いロシア産燃料を輸入しなくなることで、ロシア産以外の燃料の需要が上がり、結果的に世界的な燃料の高騰が起こっています。
日本もロシアを巡る世界情勢の影響を受け、燃料価格の輸入価格が高騰し、電気代が高くなってしまいました。
再生可能エネルギーの増加
3つ目は、再生可能エネルギーの増加による電気代の高騰です。再生可能エネルギーの使用量が増えることで電気代が高騰する理由は、再エネ賦課金の値上げや、設備の整備費用の増加にあります。
再エネ賦課金とは、太陽光発電などの電気を買い取るために使用されるお金のことを指しています。再エネ賦課金は、電気使用量に合わせて電気代に上乗せされており、電力会社が買い取る再生可能エネルギーが増えると値上げされる仕組みです。
さらに、今よりも再生可能エネルギーの買取量が増えることにより、送電線の増強が必要になり、送電線を整備するための費用も再エネ賦課金として徴収されます。
日本政府は、環境のために再生可能エネルギーの普及を目指しています。将来的に火力発電を減らし、原子力発電をゼロにした場合、2030年の電気代は2倍以上になる可能性があります。
さまざまな理由で高騰する可能性がある電気代。将来的な電気代の費用負担を減らすためにも、今のうちに太陽光発電を設置しておく必要があります。
②環境を守る
太陽光発電は、再生可能エネルギーのひとつで、環境に優しいことが特徴です。日本政府は、地球温暖化を抑制するために、2030年度の温室効果ガスの排出量を、2013年に比べて26%減らすという目標を掲げています。
温室効果ガスとは、地球温暖化の原因となるとされている二酸化炭素、一酸化炭素、フロンなどを指します。温室効果ガスは熱を閉じ込める効果があり、温室効果ガスが増え続けることで、地球温暖化が加速します。
温室効果ガスが排出される主な理由は「化石燃料である石炭や石油を燃やすこと」です。2024年現在、日本では発電の多くを火力発電に頼っており、温室効果ガスの排出を抑えるためにも、火力発電から再生可能エネルギーへの移行を目指しています。
電力会社の中には、再生可能エネルギーを送電することをコンセプトにしている会社もあります。しかし、まだ火力発電で作られた電気を使用している家庭や企業も多く、火力発電から脱却できていないのが現状です。
太陽光発電を各家庭で設置することで、火力発電で作られた電気の需要を減らすことができ、地球温暖化抑制に協力することができます。実際に、東京都では太陽光発電の義務化が2025年から開始される予定です。
東京都以外でも、世界で太陽光発電を義務化を開始している地域が多くあります。電気は「使う」だけではなく「作る」時代に突入しています。
地球温暖化を、これ以上進行させないためにも、地球にやさしい形で作られる電気を使う必要があります。地球に住む一人一人が協力し、環境にやさしいエネルギーを使用することで、地球温暖化を抑制できるでしょう。
③後付けの手間やコストを省ける
太陽光パネルを後付けする場合には、家に配線やパワコン(パワーコンディショナー)という電気を返還する装置の位置を合わせなければいけません。家の構造によっては、太陽光パネルを後付けするときに、配線やパワコンの位置に制限が出てきてしまう可能性があります。
対して、新築時であれば、配線やパワコン、パネルの位置をあらかじめ用意することが可能です。新築時に太陽光パネルを導入すれば、太陽光発電に合わせて家の形を柔軟に変更できます。
また、太陽光発電を新築時に設置することで、気兼ねなくオール電化住宅にできます。オール電化住宅とは、家電や住宅設備など、自宅で使用するエネルギーを全て電気に頼った住宅のことを指しています。
太陽光発電とオール電化住宅は相性が良いことをご存じでしょうか。オール電化住宅で太陽光発電を導入することで、日常的に使用するエネルギーのほとんどを再生可能エネルギーでまかなうことが可能です。
ただし、太陽光発電を必ず新築時に取り付けなければいけないわけではありません。太陽光発電は、後付けならではのメリットもあります。
- 固定資産がかかる心配がない
- 太陽光パネルをじっくり選べる
太陽光発電は、新築時に設置しても、後付けをしても、環境に優しく、電気代を抑えられるメリットは変わりません。どちらが正解ということはないので、それぞれの家庭に合ったタイミングで導入するようにしましょう。
太陽光パネルは新築住宅で義務化される
太陽光発電は、日本のみならず世界で義務化の動きが始まるほど、必要とされている設備です。
太陽光発電にメリットが多いことはわかったけれど、実際どのくらいの人が太陽光発電を導入しているの?
太陽光発電の導入数は、一般家庭でも増え続けています。2021年の住宅用太陽光発電(10kW未満)の導入件数が約15万件だったのに対し、2022年の導入件数は約19万件でした。(参照2)
一年で約4万件も導入数が増えているの!?
はい、住宅用の太陽光発電は年々導入件数が増えています。また、東京都では2025年に太陽光発電の義務化が始まるので、今後さらに太陽光発電の導入数が増えることが予想されます。
太陽光発電の義務化は、東京都の温室効果ガスの排出量を減らすために開始されます。
東京都以外でも、世界ではすでに太陽光発電の義務化が始まっている地域もあるんですよ。
すでに、太陽光発電が当たり前になっている地域もあるのね!
そうなんです。太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入は、世界的にも必要だとされています。温室効果ガスの排出を減らすことができる太陽光発電は、一部の人が導入するだけでは少しの効果しか得ることができません。
太陽光発電を「当たり前」にすることで、はじめて温室効果ガスの削減効果を大きくできます。より多くの人が、温室効果ガスの排出を減らす選択をすることにより、地球温暖化を抑制できます。裏を返せば、地球温暖化を止めるためには世界各国の人々の協力が必要不可欠だということです
なるほど、確かに太陽光パネルで発電した電気が問題なく使えるなら、環境にやさしい発電方法を選んだ方がいいわよね。
義務化されるほど、太陽光発電が優秀なら、新築するときに導入を検討してみてもいいかもしれないわね。
今後、太陽光発電を義務化する地域が増えていくことが予想されています。現在、排出されている温室効果ガスの量は莫大です。
いま排出されている温室効果ガスの排出を極力ゼロに近づけるためにも、世界各国の各地域で再生可能エネルギーの導入が必要不可欠だとされ、義務化の動きが始まっています。
新築で太陽光発電を設置する費用
新築で太陽光発電を設置する場合、太陽光パネルの費用に加え、工事費や周辺機器などの購入が必要になります。2023年の太陽光発電の導入費用は、新築住宅の場合1kWあたり28.8万円でした。(参考3)
4kWの太陽光発電を導入する場合、115.2万円が平均的な導入費用です。
ただし、他のモノと同様に太陽光パネルは商品によって価格が大きく異なります。屋根の状況によっても導入費用が変わることがあるので、あくまでも平均として捉えておきましょう。
また、太陽光発電は自分で費用負担しなくても導入できることをご存じでしょうか?太陽光発電が人気の近年では、太陽光発電をサブスクやリースで設置できます。
費用負担が少ない方法を選びたいのであれば、サブスクやリースを検討してみると良いでしょう。
〈太陽光発電の導入費用内訳〉(参照3)
項目 | 費用 |
太陽光パネル | 14.7万円 |
工事費 | 7.6万円 |
周辺機器(パワコンなど) | 4.7万円 |
リモコンなどの設置費用 | 3,000円 |
参考3:太陽光発電について
太陽光発電の後付け費用
基本的に、太陽光発電を導入する場合には住宅を新築するときに取り付けた方が、費用が安くすみます。なぜかというと、新築住宅の場合、太陽光発電に合わせて屋根の形状や配線の位置などを変更することができるからです。
対して、後付けの場合、家の形状に合わせて、太陽光パネルの設置位置や配線を工夫しなければいけないので、新築時に太陽光発電を導入するよりも、後付けの方が導入費用が高くなってしまう傾向にあります。
しかし、後付けの場合であっても、新築住宅で太陽光発電を導入した場合と同様に、電気代の節約効果を得ることが可能です。
また、太陽光パネルを後付けすることにより、太陽光パネルをじっくり選ぶことができ、失敗や後悔のリスクを最小限に抑えることができます。新築時に太陽光パネルを設置する場合も、後付けする場合も、どちらにもメリットとデメリットがあります。
一概に「どちらが絶対にいい」とは言えないので、状況に合わせてメリットが大きい方を選びましょう。
新築で太陽光発電を設置するメリット
新築で太陽光発電を設置するメリットは以下の四つです。
- 住宅ローンに費用を組み込める
- 初めからオール電化にできる
- 電気代の高騰に備えられる
- 太陽光パネルに合わせて屋根を調節できる
- 家に住み始めた時から発電した電気を使うことができる
とくに、太陽光パネルに合わせて屋根など家の形状を変更できる点は大きなメリットだと言えるでしょう。太陽光パネルは、南側の屋根に設置することで、他の方角の屋根に設置するよりも発電量を多くすることができます。
太陽光パネルを新築時に設置するのであれば、南側の屋根を大きくしたり、パネルの形に合わせて屋根を作ったりすることができます。太陽光パネルの形に屋根を合わせることで、端から端まで隙間なく太陽光パネルを設置することも可能になります。
また「太陽光パネルを新築時に設置すると固定資産税が上がる」といわれることもありますが、架台を使用すれば固定資産税は上がりません。
新築で太陽光発電を設置するデメリット
新築住宅で太陽光発電を導入するデメリットは、後付けをする場合に比べて少ないです。新築時に太陽光パネルを設置する場合、以下のようなデメリットがあります。
- 初期投資が増える
- 設置する太陽光パネルをよく検討できない可能性がある
対して、太陽光パネルを後付けで設置するデメリットは、以下の通りです。
- 設置費用がかかる
- 屋根の大きさによって設置できる太陽光パネルが制限される
- 屋根一体型の太陽光パネルを選ぶのが難しい
- 住んでいる家に工事が入る
新築時に太陽光発電を設置する場合、家を建てるときの費用が高くなってしまう点がとくに大きなデメリットです。特に、長期の住宅ローンを組む場合には、月々の返済額が増えてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、太陽光パネルを後付けする場合、太陽光パネルをじっくり選ぶことができるメリットがあります。新築時に太陽光パネルを導入する場合には、新しく建てる家のことで忙しくなり、太陽光パネルをじっくり選べない可能性がある点には注意しましょう。
新築でかかる固定資産税
太陽光パネルを新築時に設置すると「固定資産税が高くなる」と聞いたことはないでしょうか?。しかし、実際には太陽光パネル設置で固定資産税がかかるケースは「屋根一体型」の太陽光パネルを選んだときです。
太陽光パネルを設置する際には、架台を使用してパネルを取り付ける事が一般的です。架台を使用して太陽光パネルを設置する場合には、太陽光パネルに固定資産税がかかることはありません。
また、仮に屋根一体型の太陽光パネルを選んで固定資産税がかかるとしても、1平米あたり200円程度です。年間にすると、1万円以下で収まるケースがほとんどなので、太陽光パネルのせいで固定資産税が高額になるということはありません。
太陽光発電の導入でどのくらいお得?
太陽光パネルの発電量は、1kWあたり年間1,000kWhだといわれています。仮に、4kWの太陽光パネルを導入した場合、年間4,000kWhの発電ができる計算です。
太陽光パネルで発電した電気は、約3割消費できるといわれています。太陽光パネルの発電量が月々333kWだった場合、発電した電気を消費できる量は、約100kWhです。
例えば、東京電力の「夜トク8プラン」の昼間の電気料金は、1kWhあたり42.6円です。(参照4)4kWの太陽光パネルを導入し、発電した電気の3割消費できた場合、月々4,260円の電気代がお得になります。
2023年の4人家族の平均的な電気代は、月々11,956円でした。(参照5)つまり4人家族で平均的な電気代のケースでは、太陽光発電を導入することで、電気代を半額近くまで安くできます。
参照4:夜トクプラン(夜間・深夜の電気使用量が多い方向け)|電気料金プラン|東京電力エナジーパートナー株式会社
参照5:家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2023年 | ファイル | 統計データを探す
(4人世帯(有業者1人)-年間収入階級別 勤労者世帯)
新築で太陽光発電が必要ない場合
新築住宅でも、太陽光発電が必要ないケースが3つあります。
一つ目は、日当たりが悪い場合です。
日当たりが悪い場合、太陽光パネルを導入しても、発電量が少なくなってしまう可能性があります。あらかじめ日当たりが悪いとわかっている場合には、無理に太陽光発電を導入する必要はないでしょう。
二つ目は、屋根が狭い場合です。
とくに、南向きの屋根が狭い場合には、太陽光パネルを設置しても発電量が減ってしまいます。家の設計上、南の屋根が狭い場合には、太陽光発電は向きません。
3つ目は、電気使用量が極端に少ない場合です。
昼夜問わず、電気使用量が少ない場合には、太陽光発電を導入しても電気代の削減効果などのメリットを実感する事が少ないでしょう。
このように、新築住宅だからといって必ずしも太陽光発電を導入した方がいいわけではありません。太陽光発電の導入を検討する場合には、家の状況に合わせて個別で検討する事がおすすめです。
まとめ:新築で太陽光発電の導入を迷ったら、まずは相談を
太陽光発電は、いつ導入してもメリットが大きい設備です。
新築時に太陽光パネルを設置する場合、屋根の形状などを柔軟に変更できる点がメリットです。対して、後付けする場合には、じっくり太陽光パネルを選ぶことができます。
新築時に太陽光パネルを設置しても、後付けしても、電気代を減らせる点などの長期的なメリットは変わりません。ただ、家を建ててしまった後では、屋根一体型の太陽光パネルを選んだり、住宅ローンに費用を組み込んだりすることが基本的にできません。
「新築時に設置しておけばよかった」と後悔しないためにも、これから住宅を新築する場合には、太陽光パネルについて一度調べ、検討してみることがおすすめです。
また、設置後に、定期点検を行い不具合がないか確認してもらうことで、長期に渡り豊かなエコライフをおくることができます。