スマートシティの事例まとめ・2025年に注目の世界の都市5選

スマートシティ 事例

テクノロジーの進化が進んでいる現代において、スマートシティが注目されています。スマートシティとはIoT(Internet of Things)やAIなどのデジタル技術を活用して発展させた都市のことです。

スマートシティを実現することで私たちの生活がより豊かになるといわれていますが、具体的にどのように変化するのか気になる方も多いでしょう。

本記事では、スマートシティの基礎知識や実際に世界と日本の都市で進められている具体的な事例を解説します。最新のスマートシティの動向が分かるので、ぜひ最後までお読みください。

目次

スマートシティとは? 注目される背景

スマートシティとは、IoTやAIなどの先端技術を活用して生活の質の向上と都市の持続可能な発展を目指す新しい都市の形です。 最先端の技術を導入して、交通渋滞の緩和やエネルギーの効率的な利用、災害対策の強化、住民サービスの向上などに取り組みます。

近年、少子高齢化による労働力不足や環境問題の深刻化、都市への人口集中による交通課題などの社会問題が世界中で起きています。これらの課題を解決するためには、テクノロジーの力を借りて都市をより効率的に運営するスマートシティへの移行が必要です。

都市が抱える課題の解決策として、スマートシティへの注目が高まっています。

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スマートシティで実現できること

スマートシティでは、最先端技術の導入によって多岐にわたる都市課題を解決できます。たとえば、IoTセンサーで交通量をリアルタイムに把握し、信号機を最適化することで交通渋滞を減らせます。

また、AIがゴミの量を予測して収集ルートを最適化したり、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせたスマートグリッド(IT技術で電力量をコントロールできる送電網)で電力供給を安定させたりすることも可能です。

防犯カメラとAI顔認証システムを連携させれば、犯罪抑止や事件解決にも貢献します。このように、さまざまな分野で最先端技術を活用することで、私たちの生活をより便利で安全なものに変えられる可能性があります。

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スマートシティの事例:世界のトップ5

スマートシティの実現に向けた取り組みは世界中で進んでいます。ここでは、高い意識でスマートシティへの移行を進めている5つの都市を紹介します。

1. コペンハーゲン(デンマーク)

デンマークの首都コペンハーゲンは2025年までに世界初のカーボンニュートラルな首都になることを目標に掲げ、スマートシティへの移行を推進してきました。(参照1)

2025年までにカーボンニュートラルを実現することは断念していますが、世界で最も環境に優しい都市の一つとして知られています。コペンハーゲンはスマートシティの実現に向け以下のような取り組みを進めています。

  • IoTを活用した交通、エネルギー管理のスマートシティインフラを整備
  • 産業廃熱や再生可能エネルギーを活用した地域熱供給システムの導入

プロジェクト「CITS(コペンハーゲン・インテリジェント交通ソリューション)」を立ち上げ、Wi-Fiや市内のセンサーを通じて収集したデータを分析し、交通渋滞の抑制やCO2排出量の削減に取り組んでいます。(参照2)

また、産業排熱や再生可能エネルギーを活用した地域熱供給システムの構築も進めています。水を使って熱を家庭に運び、暖房や給湯などに利用するシステムです。(参照3)

これらの取り組みにより、コペンハーゲンは環境負荷を低減しつつ、住民が快適に暮らせる都市環境を築き上げています。

参照1:Technical and Environmental Administration, City of Copenhagen
参照2:野村総合研究所
参照3:オールボー大学

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2. マスダール・シティ(UAE)

アラブ首長国連邦(UAE)にあるマスダール・シティは、コペンハーゲン同様、世界初のカーボンニュートラル都市を目指しています。UAEは国民一人あたりの年間CO2排出量が世界でもとくに多い国です。そのため、さまざまな取り組みを実施しています。

たとえば、建物に低炭素セメントや再生アルミニウムを使用する、再生可能エネルギーによる電力供給を行うなど持続可能性に配慮した設計・建設を行っています。(参照4)

また、徒歩と公共交通による移動が容易なコミュニティをコンセプトとした都市づくりも特徴的です。電気自動運転バスや個人向け高速輸送システム(PRT)、電動カートなどの先進的なモビリティシステムを導入しているため、自動車を使わなくてもさまざまな交通手段で移動できます。

バスネットワークの拡充や自転車道の整備も計画しており、コンパクトでエネルギー効率の高いスマートシティとなることが期待されています。

参照4:国土交通省

3. サンディエゴ(アメリカ・カリフォルニア州)

アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴは、2035年までにすべての電力消費を再生エネルギーで賄う目標を掲げている都市です。(参照5)目標達成のために以下のような取り組みを進めています。

  • スマート街灯の設置
  • EVインフラの整備

2014年、市内にスマートセンサーを埋め込んだLED街灯を3000本設置しました。スマート街灯には交通状況に合わせて明るさを制御する機能のほか、センサーやカメラを通して路上駐車スペースの監視、環境モニタリングを行える機能があります。

今後、合計75,000台の街灯をスマート街灯に改修する計画を立てており、年間3,000万kWhものエネルギー節約が実現できるとされています。(参照6)

また、EVインフラの整備に力を入れているのも特徴です。2015年初めの時点で、727個の公共充電ステーションが設置されており、現在も数は増え続けています。

そのため、人口一人あたりの電気自動車運転者数が全米で最も高い都市の一つといわれています。

参照5:SAN DIEGO
参照6:cleantech SAN DIEGO

4.アムステルダム(オランダ)

オランダの首都アムステルダムは、デジタル技術と市民参加を組み合わせたアプローチでスマートシティ化を進めている都市です。住民や企業が自らスマートシティのアイデアを提案し、実行できるプラットフォーム「アムステルダム・インチェンジ」を提供しています。(参照7)

また、スマートメーターを活用して電力消費を可視化したり、駐車場の空き状況をリアルタイムで確認できるスマートパーキングを導入したりもしています。

参照7:AmsterdamSmartCity

 5. シンガポール

シンガポールは国土が狭いという特性を活かし、政府主導で都市全体のデジタル化を推進しています。たとえば、以下のような取り組みが挙げられます。(参照8)

  • 電子決済の普及
  • スマート水道メーターの導入

2017年に開始された電子決済「PayNow」は、口座登録に用いた電話番号または個人識別番号を入力することでいつでも即時振り込みができます。2018年には企業や政府機関がPayNowを用いて送金ができるようになりました。

2018年には、1つのQRコードで複数のモバイル決済が可能なSGQRコードを開発し、決済端末を持っていない小売業者でも簡単にデジタル支払いを導入できるシステムを構築しています。

また、水の使用状況に関するデータを収集・分析するために、スマート水道メーターの導入を進めています。スマート水道メーターはウェブポータル経由で簡単にアクセスできるように設計されているのが特徴です。消費者はインターネットを通じて水の使用量を確認できます。

参照8:SINGAPORE

日本のスマートシティ化は進んでいるの?

日本でもスマートシティ化の取り組みは、国を挙げて積極的に推進されています。政府は「Society 5.0」という未来社会のコンセプトを掲げており、さまざまな都市で実証実験やプロジェクトが進行中です。

お客様

日本でもスマートシティ化に向けた取り組みが進んでいるのね

地球未来図

そうですね。ただ、実証実験に留まっているものも多く、海外と比較すると遅れているという印象もあります

日本と海外の都市を比較した内容を、以下の表にまとめました。

スクロールできます
都市順位再生エネルギーの導入状況IoTの活用方法カーボンニュートラル目標年
東京 (日本)108位太陽光発電の導入災害対応・モビリティ・エネルギー管理にIoTを活用2050年
コペンハーゲン (デンマーク)7位風力・バイオマスの大規模導入エネルギー・交通・廃棄物に関するセンサーを活用2025年
シンガポール9位太陽光発電の導入(特に屋上)都市全体にIoT基盤を導入2050年
アムステルダム (オランダ)17位風力発電や太陽光発電の導入スマートグリッド、モビリティサービスへの活用2050年
サンディエゴ (アメリカ)太陽光発電と風力発電の導入スマート街路灯と環境センサーによる都市管理2035年
ロンドン (イギリス)6位風力発電(洋上風力を含む)と太陽光発電の導入を拡大中スマート交通、環境管理、公共サービスにIoTを活用2030年
パリ (フランス)71位風力・水力・太陽光発電など、さまざまなエネルギーミックスを導入交通・大気汚染の調査・都市照明などにIoTを導入2050年
ベルリン (ドイツ)37位太陽光発電と風力発電の導入スマートグリッド・交通・エネルギー分野でIoTを活用2045年
※順位は2025年スマートシティランキング(IMD調査)に準ずる

このように世界各国でスマートシティ化やカーボンニュートラルに向けた取り組みが進められています。

スマートシティ化に関しては、海外事例を参考にしつつ日本の特性に合わせた取り組みが行われていますが、国際経営開発研究所(IMD)の調査による2025年スマートシティランキングを見ると先進国の中では遅れているのが現状です。(参照9)

参照9:IMD

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日本で注目されているスマートシティ

日本国内でも、それぞれの地域が抱える課題解決に向けて、スマートシティ化の取り組みが進められています。ここでは3つの都市の取り組みを紹介します。

会津若松市

福島県会津若松市は、ICT(情報通信技術)をさまざまな分野で活用したスマートシティを目指して取り組みを進めています。

都市OS「会津若松+」を整備しており、登録した市民に合わせた市の情報がスマホやPCから見られます。2022年には高血圧者向けのオンライン診療やデジタル地域通貨「会津コイン」などを導入しました。

また、スマートシティの必要性を市民に理解してもらうために、デジタルサービスの体験会や意見交換会などを定期的に開催しています。

今後は、国の交付金を活用して、マイナンバーカード利用したデジタルサービスの実装に力を入れていく予定です。

参照10:会津若松市

北海道札幌市 

北海道札幌市ではICTを活用した「健幸まちづくり推進プロジェクト」を実施しています。スマホアプリ「さっぽろ圏スマートアプリ」をインストールすることで、歩数に応じてポイントが当たる抽選に参加できます。(参照11)

貯めたポイントは電子マネーのWAONポイントに交換したり地域団体へ寄付したりすることが可能です。また、アプリから「まちなかクエスト」に参加すると、地図上の指定された地点に向かうことでもポイントの抽選に参加できます。

体重や血圧の記録も行えるようになっており、デジタル技術で市民の健康促進をサポートしています。

参照11:札幌市

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スマートシティ化のデメリットはあるの?

スマートシティ構想は世界中で注目されていますが、リスクやデメリットも存在します。社会問題を効果的に解決するには、テクノロジーの導入がもたらすデメリットにも目を向けることが大切です。ここでは、スマートシティ化により生じる主なデメリットについて解説していきます。

デジタル格差(デジタル・ディバイド)

スマートシティ化が進むことで、デジタル格差を拡大させる可能性があります。高度なデジタルサービスやインフラが整備される一方で、それらを使いこなせない人々が「便利さ」から取り残されてしまうからです。

とくに、高齢者やデジタルリテラシーの低い層はサービスにアクセスしにくくなる場合があり、スマートシティの恩恵を十分に受けられないかもしれません。

格差は社会の分断につながる恐れがあるため、スマートシティを推進するうえで対策が求められます。多くの人が便利さを実感できる都市設計が必要になるでしょう。

サイバーセキュリティ・個人情報取り扱いのリスク

スマートシティでは都市のあらゆる情報がデジタル化されネットワークで繋がるため、サイナーセキュリティのリスクが高まります。都市の基幹システムがサイバー攻撃を受ければ、交通網の麻痺や電力供給の停止など、大きな被害が発生する可能性があるでしょう。

また、個人情報のデータが収集・分析されるため、適切に管理する必要があります。万が一、個人情報が流出すれば個人のプライバシーが侵害されるだけでなく、社会全体の信頼が損なわれかねません。

スマートシティ化を目指すには、強固なセキュリティ対策と個人情報保護の取り組みが不可欠です。

IT機器・設備の製造・設置による資源消費とCO₂排出

スマートシティを構築するためには、大量のIT機器やセンサー、通信設備などが必要になります。これらの製造・設置には多くの資源が消費され、製造過程で大量のCO2が排出されます。

持続可能な都市を作るためには、製造から運用、廃棄までのライフサイクル全体の環境負荷を考慮しなくてはなりません。リサイクルや省エネルギー設計など、より持続可能なサプライチェーンの構築が求められます。

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まとめ

スマートシティは、IoTやAIなどの先端技術を都市機能に組み込むことで、住民の生活の質を向上させ、都市の持続可能性を高める新しい都市の形です。交通渋滞の緩和、エネルギー効率の向上、災害対策の強化など、多くのメリットが期待されています。

一方で、デジタル格差の拡大やサイバーセキュリティリスクなどの課題もあります。これらの課題を解決しながら、地域の実情に合わせたスマートシティを目指すことが重要です。

スマートシティ化は世界中で進められており、これからさらに加速すると予想されます。まずは住んでいる地域の取り組みから詳しく調べてみてはいかがでしょうか。

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