「電気料金の値上げにより節電したいけど、どのような対策をすれば良いかわからない」
「太陽光パネルを設置しているけど、発電した電気を効率よく使いたい」
このような悩みを抱えていませんか?
HEMSを導入することで、太陽光パネルで発電した電気を効率よく使え、家庭内の電気利用を最適化できます。電気代の節約や省エネ効果があるHEMSですが、日本ではまだ普及率が低いためどのようなものか分からない方が多いのではないでしょうか。
実は、HEMSは電気代の節約だけでなく、地球温暖化対策にもなるため、国が普及を進めています。
この記事では、HEMSの基本情報と太陽光パネルや電気機器と連携させることで何ができるのか分かりやすく解説します。
太陽光パネルの義務化が始まる地域もあり、HEMSを導入するメリットが高まっているため、是非最後まで目を通してみてください。
- HEMSの基礎知識
- HEMSと太陽光パネルの相性が良い理由
- HEMSと連携できる機器と連携するメリット
- HEMSの導入方法とその費用
- HEMSの補助金情報
HEMS(ヘムス) の基本情報
HEMS(ヘムス)とは「Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」の略称で、家庭のエネルギーを管理し、節約に役立てるシステムのことです。
家電や給湯器などのエネルギーを使う機器や、太陽光パネルのようなエネルギーを作り出す機器をネットワークに接続することで、エネルギーの使用量や発電量をアプリやモニターで見られるようになります。
また、家庭内のエネルギー使用が最適となるよう各機器を自動で制御したり、スマートフォンで遠隔操作をすることもできます。
「スマート家電(IoT家電)とは何が違うの?」
良い質問ですね!
スマート家電はインターネットに繋ぐことで、スマートフォンで操作ができる家電のことです。
スマート家電はインターネットを通じて個々の家電の管理や操作ができる機器であるのに対し、HEMSは家電や太陽光パネルなど家庭内のエネルギー全体を管理できるシステムという違いがあります
HEMSはスマート家電を含めた複数の機器のエネルギーを管理するシステムということなんだね
HEMSの普及率
HEMSの普及率は令和3年度で2.5%とあまり高くはありません。しかし、住宅が建てられた時期別に見ると、HEMSの使用率が徐々に高くなっていることがわかります。(参照1)
2011〜2015年に建てられた住宅に住む世帯では6.9%が、2016年以降に建てられた住宅に住む世帯では8.0%がHEMSを使用しています。
国の計画で「HEMSを利用したエネルギー管理の実施の促進」が掲げられていることもあり、普及率はこれからさらに高まるでしょう。
参照1:HEMSについて 環境省
HEMSが注目される理由は
HEMSが注目される理由は省エネ対策になるからです。近年、地球温暖化対策のためにCO2の排出を減らすことが国際的な目標となっています。日本では2030年までにCO2などの温室効果ガスを2013年度よりも46%も削減することを目標としています。(参照2)
そのためには、企業や地方自治体だけでなく、私たち個人のCO2排出量を減らすことも重要です。日本ではCO2 を排出する火力発電で多くの電気を作っているため、家庭内の電気使用量を減らすことでCO2の削減ができます。
そこで、注目されているのがHEMSです。HEMSは家庭内の電気利用を最適化できるため、省エネ効果があり、CO2の削減に貢献できるのです。
日本政府は「2030年までにHEMSを全世帯に普及させる」という目標を掲げているため、HEMSの重要性が高まっています。(参照3)
参照3:環境技術解説 地球展望台
HEMSでなにができるの?
HEMSができることは主に以下の2つです。
- 電気利用を自動で最適化できる
- 電気利用状況が一目でわかる
それぞれ詳しく解説していきます。
電気利用を自動で最適化できる
HEMSは家電の電気使用量や太陽光パネルの発電量などを監視し、各機器を自動で制御することで、家庭内の電気利用を最適化してくれます。
例えば、部屋が暑いためエアコンを24度に設定した状態で動かしたとします。数十分後、部屋が涼しくなると、HEMSが自動で省エネ推奨温度である28度に切り替え、電気の使用量を抑えます。
他にも、時間帯によって料金が変わる電気契約の場合であれば、料金の安い夜間に家電を動かすよう調整することも可能です。
このように、HEMSは電気利用を自動で最適化できるため、電気代の節約や省エネになります。
電気利用状況が一目でわかる
HEMSによって、家庭内の電気利用状況が一目でわかるようになります。電気を多く消費している家電を探すことで、電気の無駄遣いを見つけられます。
電気料金の値上げもあり、「節電を意識しているのに電気代が中々減らない」と悩んでいる家庭も多いのではないでしょうか。
そんなときHEMSで家庭内の電気利用状況を確認できれば、原因と改善策がわかります。家電機器の電気利用状況が個別でわかるため、電気を多く消費している家電を見つけることができるのです。
原因となる家電が見つかれば、使用時間を減らしたり使う時間帯を変えたりと対策をとれます。また、電気の使用量が減っていくのを具体的な数値で見られるため、節電できていることが一目でわかり、達成感を味わえます。
HEMSは電気利用状況が一目でわかるため、家庭内の電気使用量の見直しができ、省エネに取り組む意欲がさらに高まるでしょう。
HEMSと太陽光パネルを連携させる理由は?
自宅で太陽光パネルを使っている場合は、HEMSと連携させることで、電気をより効率的に使えるようになります。その理由は以下の2つです。
- 自動で売電量が増えるように調整してくれる
- 電気代の高い時間帯の使用量を自動で制御してくれる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自動で売電量が増えるように調整してくれる
HEMSは電気利用を自動で最適化できるため、太陽光パネルで発電した電気の売電量が増えるように調整してくれます。
家電機器を自動制御することで、家庭内で消費する電気の量を減らせるため、その分売電量を増やすことができるのです。
固定価格買取制度(FIT)の期間中であれば、売電価格が高くなっているため、HEMSと連携して売電量を増やせるとお得になりますよ。
電気代の高い時間帯の使用量を自動で制御してくれる
太陽光発電の売電価格が下がった後でも、HEMSと太陽光パネルを連携させるメリットがあります。それは、電気代の高い時間帯の使用量を自動で制御してくれることです。
2016年から開始された一般家庭での電力自由化によって、様々な電気料金のプランが増えています。その中に、時間帯によって電気代が変わる料金プランがあります。
昼間は電気代が高く、夜間は低く設定されていることが多いため、昼間の電気使用量を抑えることが重要になります。
HEMSと太陽光パネルを連携することで、昼間は太陽光発電による電気を優先的に使い、電気の使用量が少なくなるよう自動で制御してくれます。
このようにHEMSの導入で、太陽光パネルで発電した電気を効率的に使うことができ、電気代の節約や省エネになります。
HEMSと連携できる機器
HEMSを様々な機器と連携することで、電気代の節約や省エネになるなどのメリットがあります。
ここからはHEMSと連携できる機器と連携したときのメリットについて紹介していきます。
蓄電池
蓄電池とは太陽光パネルで発電した電気や、電力会社から購入した電気を貯めることができる機器です。貯めた電気は必要なときに使うことができ、停電時の緊急用電源として災害の備えにもなるため、近年注目されています。
HEMSと連携することで、貯めた電気を効率よく使えるようになります。家庭内の電気利用が最適になるよう、充電や放電の管理をしてくれるため、電気代の節約や省エネ効果が期待できるでしょう。
スマートメーター
スマートメーターとは電力使用量を計測するための通信機能が搭載された電力メーターです。検針員の目視での確認が必要なくなり、リアルタイムの電気使用量がデータで確認できます。
HEMSと連携することで、スマートメーターで計測した電気使用量のデータを元に家庭内の電力の最適化ができるようになります。HEMSによる省エネ効果を高めるためにはかかせない機器です。
エコキュート
エコキュートとは大気の熱エネルギーを利用して、少ない電力でお湯を作れる機器で、作ったお湯を貯めることもできます。
HEMSと連携することで、お湯の沸き上げに使う電気の最適化ができます。
例えば、天気予報から翌日が晴れだと分かる場合には、夜間のエコキュートの沸き上げ量を減らし、翌日の太陽光発電の電気で沸き上げを行うなどの調整をしてくれます。
HEMSだけでなく、太陽光パネルや蓄電池とも組み合わせることで、さらなる省エネ効果がありますよ。
エアコン
エアコンとHEMSを連携することで、電気の使用状況を最適化してくれるため、効率的な運用ができます。
電気の消費量を減らすような温度調整を自動で行うことで、省エネになります。また、外出後に電源の消し忘れに気づいても、スマートフォンから遠隔操作をして電源をオフにできるため安心です。
エアコンは電気使用量が多いため、他の家電よりもHEMSと連携させるメリットが大きいと言えるでしょう。
エネファーム
エネファームとは、都市ガスやLPガスを利用して電気を作り、その際に発生する熱を使ってお湯を沸かすことができる機器です。エネルギーを無駄なく使えるため、地球温暖化対策に貢献できます。
HEMSと連携することで、発電状況や貯湯量を細かく確認でき、外出先から遠隔操作もできるようになります。帰宅中にお風呂を沸かすよう指示を出すことで、帰宅後すぐにお風呂に入れます。
操作や管理がより楽に行えるため、暮らしがさらに便利になるでしょう。
v2h
V2HはVehicle to Homeの略称で、電気自動車(EV)に充電してある電気を自宅でも使えるようにする機器です。EVを蓄電池のように使えるため、災害時の非常用電源として活用できます。
HEMSと連携することで、蓄電池と同じように貯めた電気を効率よく使えるようになります。家庭内の電気利用が最適になるよう、充電や放電の管理をしてくれるため、電気代の節約や省エネ効果が期待できるでしょう。
HEMSの導入方法
HEMSの導入方法を簡単にまとめると以下の通りです。
- HEMS対応分電盤とHEMS機器を設置する
- HEMS機器と家電や太陽光パネルなどをインターネットで繋ぐ
- エネルギー使用量が見られるようになっているか確認する
まずは分電盤がHEMSに対応しているかを確認しましょう。対応していなければ、HEMS対応分電盤に変える必要があります。HEMSに対応している場合はHEMS機器の設置だけで大丈夫です。
HEMS機器が設置できたら、家庭内のスマート家電や蓄電池、太陽光パネルなどとインターネットを通じて繋ぎましょう。
モニターやアプリで電気の使用状況が確認できれば、HEMSの導入は完了です。
HEMSの導入には専門機器が必要となるため、専門販売店や取り扱いのある家電量販店などで詳しく話を聞くことをおすすめします。
HEMSの導入費用
HEMSの導入費用はメーカーや施工会社によって変わってきますが、約15万円〜20万円かかることが多いです。大まかな内訳を以下の表にまとめました。
【HEMSの導入費用内訳】
HEMS機器 | 10万円~15万円 |
HEMS対応分電盤 | 2万円~3万円 |
施工費用 | 約3万円 |
既に自宅の分電盤がHEMS対応だったとしても導入には10万円以上かかります。しかし、HEMSで家庭内の電気利用を最適化できれば、導入費用以上の電気代の節約効果が期待できるため、長い目で見ると得をするでしょう。
また、電気を無駄なく活用でき、省エネルギーになるため環境にやさしく、地球温暖化対策に貢献できます。
初期費用はかかりますが、それ以上にHEMSを導入するメリットは大きいといえます。
HEMSは補助金の対象になるの?
HEMSは補助金の対象になるの?
HEMS専用の国の補助金は2024年度現在ありませんが、お住いの地域によっては補助金を交付している地方自治体がありますよ
2024年度にHEMSを対象とした補助金を交付している自治体を以下の表にいくつかまとめました。
【HEMSを対象とした地方自治体の補助金】
地方自治体 | 補助金の名称 | HEMSの補助金額 |
埼玉県さいたま市 | 令和6年度「スマートホーム推進・創って減らす」機器設置補助金(参照3) | 5000円 |
東京都江東区 | (個人住宅用・集合住宅用)地球温暖化防止設備導入助成(参照4) | 設置に要する経費の5% |
愛知県刈谷市 | 住宅用地球温暖化対策設備設置費補助制度(参照5) | 設置に要した費用の範囲内で、上限2万円 |
HEMSを導入するときには、お住まいの地方自治体へ補助金を交付しているかを問い合わせることをおすすめします。
参照3:令和6年度「スマートホーム推進・創って減らす」機器設置補助金 さいたま市役所
参照4:(個人住宅用・集合住宅用)地球温暖化防止設備導入助成 江東区役所
太陽光パネルの設置をするのならHEMSがおすすめ
HEMSを導入することで、電気利用を最適化できるため節約や省エネ対策になり、地球温暖化対策にも貢献できます。また、太陽光発電とも相性が良く、作った電気を効率よく使えるようになるため、大変便利なシステムです。
2024年現在ではHEMSの普及率は低いですが、国の計画で「2030年までにHEMSを全世帯に普及させる」という目標を掲げているため、これからさらに普及が進んでいきます。
環境にも家計にも優しいシステムなので、太陽光パネルを既に設置している方やこれから設置する方は、HEMSの導入も考えてみてはいかがでしょうか。