「太陽光発電を買うと損をする」
「太陽光はもう終わり」
最近、こんな言葉を目にして、太陽光発電を購入するかどうか迷っている人も多いのではないでしょうか?
2026年から太陽光発電の売電制度の内容が変わります。売電価格や仕組みがこれまでと同じではなくなり「これから意味があるのか」「もう遅いのではないか」と不安に感じるのは自然なことです。
しかし、制度が変わる背景にはそれに見合った理由があります。
そして、2026年以降に太陽光発電設備を自宅に付けた場合、必ず損をするわけではなく、メリットも多くあります。
この記事では、まず2026年の売電制度の変更によって「不利になった点」「特になった点」を、実際の数字や具体例を交えながら、できる限り詳しく、正確に解説します。
さらに「なぜ制度が変わる必要があるのか」にも納得のできるように解説を加えています。
この記事を読むことで、周囲の声やあおり文句に振り回されることなく、自信をもって太陽光発電の設置を検討できるように丁寧に解説していきますので、ぜひ最後まで通して読んでみてくださいね。
2026年から太陽光の売電制度はどう変わる?
2026年度からFIT制度には2025年初旬に政府から発表された『初期投資支援スキーム』が取り入れられることがになりました。
それによって2026年からの売電制度は、以下の点が変更になります。
- FIT(固定価格買取制度)が変更になる
- 開始時期:2026年4月以降に売電契約が“認定”された家庭が対象。2026年3月31日までに“FIT認定”されていれば、旧制度が適応
- 変更内容:制度では売電価格は10年間一切変わらないが、新制度では売電価格が最初の約4年間とその後では異なる。
ごく簡潔にまとめると上記のようになります。
なお、正確にはFIT制度が変わったのではなく、FIT制度に『初期投資支援スキーム』という新しいスキームが取り入れられたのですが、この記事では分かりやすくするために「旧制度」と「新制度」という表現をしました。
次からの項目では開始時期と変更点について詳しく解説します。
地球未来図皆さん価格がどう変更になったかが一番気になると思うのですが、期間によって適応になる売電価格が変わりますので、先に開始時期について解説していきますね。
なお、FIT制度についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、FIT制度について疑問点がある方はこちらも合わせてご覧ください。
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2026年の新しいFIT制度が適用されるのは、いつから?
重要な前提として、新しいFIT制度が適用されるかどうかは「2026年のFIT認定日」を基準に決まります。
太陽光を設置した日や、売電を開始した日ではなく「FIT認定を受けた日が、2026年4月1日以降かどうか」が分かれ目になるということを覚えておいてください。
旧制度が適用された場合、売電価格認定日に決まった売電金額はその先10年間変わりません。14円/kWhと決まったら、14円/kWhで10年間売電を続けることになります。
新制度では、売電認定の時に前半約4年間と残りの期間の2つの売電価格が決まります。例えば、最初は24円/kWh、後半は8.3円/kWh円と決まったらこの金額で電気を売り続けることになり、これも後になって変更になることはありません。
これを踏まえたうえで、売電金額に新しいFIT制度が適応されるかどうかを見ていきます。
新旧どちらの制度になるかすぐ判断できるケース
FIT認定を2025年中にすでに受けているか、十分に余裕をもって申請をしていて2026年の3月31日までには認定が受けられそうな家庭は旧制度が適用されます。
逆に、2025年の年末時点でまだ太陽光発電の購入、工事、売電手続きなどを開始していない家庭は新制度か適用されます。
【新旧制度の分け目となる日程】
| ①2026年3月31日までにFIT認定を受けた場合 | 旧制度が確定で適用される |
| ②2026年4月1日以降にFIT認定を受けた場合 | 新制度が確定で適用される |
ここで問題になるのが、FIT認定を申請してから、実際に認定が下りるまでに数か月の時間がかかる点です。FIT認定の処理には、通常 1〜3か月程度かかり、時期や混雑状況によっては、さらに長引くこともあります。
そのため、申請した時点では「旧制度になるか、新制度になるかを確定できないパターン」は実際に存在します。
2025年後半に申請した場合は、どちらの制度になるの?
「2025年に太陽光を設置したが、旧制度なのか新制度なのか分からない」という悩みは、2025年後半に太陽光を購入・設置した場合に起こることがあります。
なぜなら2025年の後半から手続きを開始した場合、 FIT認定の処理期間が、2026年3月末をまたいでしまう可能性があるからです。
ここで太陽光発電の購入契約から売電申し込み、FIT認定までの流れを簡単に整理してみます。
【太陽光発電の設置から売電までの流れ】
- 太陽光発電の購入・工事契約
- FIT認定の申請(売電申し込み)
- 工事・系統連系などの手続き
- FIT認定が下りる
- 売電スタート
たとえば、2025年1月に申請し、認定処理に時間がかかるという場合、手続きにかかる時間によっては
認定日が2026年4月以降になり、新制度の適応になることもあり得ます。



制度としては整っていても認定処理のタイミングはコントロールできないため、申請時点でどちらになるか分からないケースが出てしまうのね。
一般的に太陽光販売代理店では
- 認定に1〜3か月程度かかることがある
- 年度をまたぐ可能性がある
- 旧制度に必ず間に合うという確約はできない
という説明を行っています。
旧制度に間に合うかどうかは、認定手続きの混雑状況によって左右されるため、申請時点で確定することはできません。
2025年12月時点で、これから太陽光を購入する場合、売電制度は新制度になる可能性があると考えておく方が現実的と言えるでしょう。
また「どちらになるか分からない状態」を絶対に避けたい、「新制度がよい」という方は、申請の時期を遅らせて調整することを販売店と相談してみましょう。



悪徳な販売業者の場合「旧制度に間に合わせるために早く申し込んだ方がいい」などと決断を焦らせる手口を使うこともあります。
実際には早く申し込んでも、申請書類の不備などの別の理由で認定が遅れることもあります。
また新制度と旧制度のどちらが必ず得・損ということは一概には言い切れません。
太陽光発電は高額な買い物ですので、焦らせてくる業者の手口にはのらずに、じっくり納得のいく比較検討を行うことが重要です。
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2025年までと2026年からの売電価格の比較
2026年からの制度では、売電価格が10年間固定ではなく、途中で大きく下がります。
そのため売電収入が旧制度と比べて減ることは事実です。
ここでは旧制度(2024年度)と新制度(2026年度)の売電価格を詳しく比べてみます。
まず政府から公式に発表されている売電価格は以下の通りです。
2024年に旧制度で認定された場合の売電価格:10年間16円/kWh
2026年に新制度で認定された売電価格:約4年間・24円/kWh、残りの期間8.3円/kWh



図で表すとこんな感じね


参考:経済産業省
最初の4年間のスタート日は売電認定日ではなく、工事が完了し売電を実際に始めた日から計算されます。そのため実際の現場では、売電期間が1~2か月の増減があり、46か月~50か月程度まで売電する家庭によって多少バラつきがあります。
そのため、ここでは約4年間と説明しています。
新制度ではどれくらい売電収入が減るのか?
では2026年の新制度になると旧制度と比べてどのくらい売電収入が減るのかを確認していきます。
ただし、売電収入は各年度ごとにかわります。過去の値段は以下の通りです。


今回は一番最近の2024年と比べていきます。



10年以上前はもともと売電価格自体がとても高かったから、
比較してもあまり参考にならないんだね
以下のような、一般的な戸建て住宅を想定してみましょう。
太陽光パネルの発電容量:4kW
年間発電量:約5,000kWh
発電量のうち半分を自宅の電気として使用し、約半分を売電できたと仮定
【旧制度の場合】
1年間の売電収入 2,500kWh(約5,000kWh÷2)× 16円 = 40,000円
10年間の売電収入 40,000円 × 10年= 40万円
【新制度の場合】
最初の約4年間の売電収入 2,500kWh × 24円 × 4年= 240,000円
残りの期間の売電収入 2,500kWh × 8.3円 × 6年= 124,500円
合計の売電収入 240,000円 + 124,500円 = 36.5万円
このように新制度では3.5万円売電収入が減っています。
ただし、ここではわかりやすくするためにとても単純な計算をしていますので、実際の売電収入の想定金額は、各家庭のさまざまな条件によって異なるということを忘れないでください。



「売電価格が上がる!ということが強調されている広告や情報投稿もときどき見かけますが、正確には「約4年間の売電価格が今までよりは高くなる」ということですので、注意しておきましょう



単純に計算をすると、新制度によってすこし売電収入は減るということだね



ちなみに、売電割合は日中不在が多い家庭では50〜60% 、日中在宅が多い家庭では 30〜40%、蓄電池を持っている家庭は売電せずに電気を貯めるので 10〜30%まで下がることもあります。
新制度の売電価格は安い?高い?
2026年度の売電金額は最初の約4年間・24円/kWh、残りの期間8.3円/kWhと先ほど紹介しましたが、この金額は『高くもなく・安くもない』と考えるのが妥当でしょう。
それはなぜかを前半約4年間と後半に分けて説明します。
前半の24円は、以下のグラフの通り2019年並みの売電価格です。
2010年代初期の30円代レベルまで戻らなかったのが残念という見方もありますが、昨今のエネルギー関係のさまざまな問題を考えると2024年の16円から8円も上がっているのは、まずまずといえるでしょう。



さまざまな問題については、最後の【2026年からなぜ新しい売電制度が始まるの?】の項目で詳しく解説します。


後半の8.3円ですが、この値段はFIT制度終了後の自由売電価格の平均値といえます。
10年のFIT期間が終了すると、各家庭は電力会社と直接契約して売電をすることになります。
その場合の値段は固定はされておらず、できるだけ高価格で買い取ってくれたり、その他条件の良い販売先を探すことになります。
2025年時点では、FIT終了後の買取価格は7〜10円/kWhがの会社が多いため、大体同じくらいか少し低めといえるでしょう。



2027年度、2028年度はどうなるのかしら?



これからどうなるかはここから掘り下げていきますが、簡潔にいうと横ばいになるか、長期的には下がるという見通しです。
新制度では「太陽光は損」なのか?
このように売電価格が下がり続ける太陽光発電の購入にはメリットは全くないのでしょうか?
「売電収入で儲けたい」「数年以上前に知人が太陽光発電の売電で収入を上げていたので自分も同じようにしたい」ということであれば、そういったメリットを得ることは難しいのが現実です。
しかし太陽光発電の設置自体することで、高騰していく電気代を賄うことができますし、その他にもメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
電気の購入量を減らせる
電気代は年々高騰しています。
特に電気代の影響が大きく表れたのが2022年です。
この年は、燃料価格の高騰や円安、国際情勢の影響が重なった年です。家庭用の平均電気料金は、2021年の約28円/kWhから2022年には約34円/kWhへと上昇しました。
参考:資源エネルギー庁



おぼえているわ!
これはわずか1年で約21%の値上げにあたります。
このように電気代が高騰した時、太陽光を設置していない家庭では、この上昇分の21%をそのまま電気代の上昇分として支払うことになります。
一方で、太陽光や蓄電池を導入している家庭では、自宅で発電した電気を利用していますので、購入する電気の量自体が増えません。そのため電気代の増加率は数%程度にとどめることも可能です。


2022年のような急激な電気代の高騰を避けるために政府が調整をし、現在は急激な高騰は抑えられています。
しかし化石燃料が足りなくなっていることや、脱炭素の実現のためにも、電気代は今後もじりじりと上がっていくことは避けられないでしょう。
そこで、自家発電した電気を使えば、売電による入金を増やせなくても、出ていくお金を減らすことが可能です。



太陽光発電は今、売電で儲けるための設備ではなく、電気代高騰に備えるための設備と考えるのがよいでしょう。
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高額の補助金で、初期費用を抑えて購入が可能
売電価格は下がりましたが、その一方で 国や自治体の補助金制度は、以前より手厚くなっているケースもあります。
特に東京都では100万円以上の補助金が出ることもありますので、少額の初期投資で太陽光発電を設置することができ、売電によって設備に投資したお金を回収する必要がなくなっているケースもあります。
また0円から太陽光発電を設置できるリースや屋根貸し方式もあります。



行政側の狙いが、購入者に「売電で回収してもらう」よりも「最初から負担を軽くして導入を増やす」という方針に代わっているんだね。
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光熱費が安い・電気代が抑えられる家は価値が高い
近年では、ZEHや省エネ基準を満たす住宅が「特別な家」ではなく、標準になりつつあります。
太陽光発電や高断熱仕様の住宅は、日々の電気代を抑えられるだけでなく、将来のエネルギー価格変動の影響も受けにくくなります。そのため、購入時の価格だけでなく、長く住む中での維持費まで含めて評価される時代に入っています。
今後は、電気代が高い家よりも、電気を「あまり買わずに済む家」が選ばれやすくなり、結果として省エネ性能の高い住宅ほど価値が下がりにくいという流れが強まっていくでしょう。
2026年からなぜ新しい売電制度が始まるの?
2026年に売電制度が変更になった背景として、とくに重要な3つのポイントを以下で詳しく説明します。
① 太陽光発電が増え「電気の使われる時間」が問題になっている
太陽光発電が広く普及したことで、発電できる量だけではなく「いつ電気が使われるか」が問題になっています。どういうことかというと、 太陽光発電は日照時間中にしかできませんが、家庭で電気を多く使うのは朝と夕方から夜にかけてです。
その結果、晴れた日の昼間には電気が余り、夜間や曇りの日には電気が不足しやすい状態になっています。
売電価格を調整する政府の立場では、昼間の電気は既に十分にあり、余った電気を高い価格で買い取り続けることのメリットが小さくなっているのが事実です。
そこで、昼間に自宅で電気を使用したり、蓄電池を合わせて普及させ、夜にも家庭内で電気を使ってもらう方が、電力システム全体として合理的だという考え方に移行しています。
② 化石燃料が減っていく中で、電気はより貴重な資源になっている
日本の電力は今も多くを化石燃料の輸入に頼っています。しかし、世界の化石燃料は有限であり、価格や供給は国際情勢の影響を大きく受けます。
この先20年、30年と長期で考えたとき、電気を「買い続ける前提」の社会構造は、次第に成り立ちにくくなっているといわざるを得ません。
そのため政府はとしては、完全な自給自足ではなくとも家庭単位で一定量の電気を、それぞれ自分たちでまかなえる状態をできるだけ早く広げたいという方針があります。
太陽光発電は、そのための重要な手段であり、制度の変更もこうした長期的な視点に基づいています。
③ 脱炭素の目標と国民負担、両立が限界に近づいている
日本は2050年のカーボンニュートラル実現を国際的に約束しており、再生可能エネルギーを今後も増やしていく必要があります。太陽光を普及させ、化石燃料の輸入やCO₂排出を減らすことは、世界のどの国でも避けて通れない課題です。
一方で、再生可能エネルギーの普及を支えてきたFIT制度は、電気を使うすべての人が負担する「再生可能エネルギー賦課金」によって成り立っています。国はFIT制度によって高く電気を買取りますが、この高い買取価格と、本来の市場価格との差額は、再エネ賦課金によって支払われています。
しかし、普段の電気代に含まれる再エネ賦課金の金額は年々上がっており、その負担もそれぞれの家庭にとって大きなものになっています。太陽光発電が増えるほど、この負担は膨らみやすく、これ以上大きく引き上げることは現実的に難しいという状況にあります。
再エネ賦課金の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
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まとめ:売電価格が変わっても太陽光発電のメリットはある
2026年度から売電制度が変わることで、「太陽光発電はもう意味がないのでは?」と感じた人もいるかもしれません。しかし、売電価格の変更だけで、太陽光発電の価値が決まるわけではありません。大切なのは、自分の家にとって、これから先も太陽光が必要かどうか、そして今の制度を前提にしたうえで、無理のない形で元が取れるかどうかを、冷静に考えることです。
太陽光発電のメリットは、売電収入だけではなく、電気代を抑えられること、将来の電気料金の変動に備えられることにもあります。その効果は、住まいの条件や家族構成、電気の使い方によって大きく変わります。そのため、発電量や売電量のシミュレーションを行い、売電申し込みのスケジュール、補助金が使える可能性なども含めて、自分のケースに当てはめて判断することが重要です。
太陽光発電は決して安い買い物ではありません。だからこそ、制度の噂や一部の情報だけで決めるのではなく、信頼できる販売店に相談し、具体的な数字をもとに検討することをおすすめします。多くの販売店では無料相談やシミュレーションを行っていますので、まずは気軽に相談し、自分にとって本当に納得できる選択肢かどうかを確かめてみてください。
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