日本の発電方法の中で発電量が一番多いものは何かご存じでしょうか?
現在、日本は火力発電での発電量が一番多く、全体の7割以上を占めています。また、世界的に導入が進められている再生可能エネルギーの発電割合は2割ほどです。日本は2030年までに再生可能エネルギーの発電割合を36〜38%まで増やすことを目標としています。
この記事では、日本の発電方法のランキングや日本の発電方法の変化、再生可能エネルギーについてわかりやすく解説します。発電方法の割合の変化を見ていくことで、太陽光発電などの再生可能エネルギーがなぜ重要視されているのかがわかるようになります。
世界各国の再生可能エネルギー事情なども解説しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
- 日本の発電方法のランキングと課題
- 日本の過去から未来までの発電方法の変化
- 世界各国の再生可能エネルギーの普及率
- 再生可能エネルギーの重要性
日本の発電方法の割合・円グラフ
資源エネルギー庁の総合エネルギー統計によると2022年度の日本の発電方法第1位は火力発電です。火力発電は全体の72.8%を占めています。
第2位は太陽光発電で9.2%、第3位は水力発電で7.6%です。それ以降は原子力発電5.5%、バイオマス発電3.7%、風力発電0.9%、地熱発電0.3%と続いています。
日本では石油、石炭、天然ガスを使う火力発電が発電量の多くを占めているため、エネルギー源を輸入に依存しているのが現状です。また、火力発電はCO2を排出してしまうため、環境に与える影響も考えなくてはいけません。
データ参照:集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計) 資源エネルギー庁(グラフ作成:地球未来図作成)
日本の発電方法の変化
最新のデータでは火力発電が最も多いですが、過去の発電方法はどうでしょうか?
グラフを見ながら10年ごとに発電方法を比較をしてみましょう。
データ参照:発電設備と発電電力量 電気事業連合会(グラフ作成:地球未来図作成)
1970年代に二度の石油ショックを経験したことで、石油への依存を減らすため、代わりのエネルギーとして原子力や天然ガスが多く使われるようになりました。
そのため、1990年以降は石油等による発電量が減少し、天然ガスや石炭、原子力の発電量が増加しています。しかし、2011年3月の東日本大震災により東京電力福島第一原発事故が起こり、原子力発電の危険性が問われ、発電が一時停止しました。
その後、一部の原子力発電所は再稼働しましたが、2010年までは全体の4分の1以上を占めていた原子力発電も2020年では4%まで減少しています。
石油や原子力による発電が減ったことにより、注目されたのが地熱および新エネルギーです。2010年では2%でしたが、2020年では6倍の12%まで増加しています。(参照2)
これからはどの発電方法が増えていくのかな?
これから増える日本の発電方法は?
これから増える日本の発電方法は「輸入資源に頼らない発電」と「環境に害のない発電」です。
なぜ、この2つの方法が増えるのか具体的な理由を詳しくみていきましょう。
輸入資源に頼らない発電
経済産業省資源エネルギー庁のデータによると、2020年度の日本のエネルギー自給率は11.3%で、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べても低い水準となっています。
データ参照:日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 資源エネルギー庁(グラフ作成:地球未来図作成)
電気を作るためのエネルギーとして、石油や天然ガスなどの輸入に依存する化石燃料を80%以上も使っていることが大きな原因です。
化石燃料は戦争や紛争が起きたり円安が進んでしまうと、コストが増えることで輸入量が減ることがあります。また、化石燃料は地球上に無限に存在するわけではなく、使い続けるといつかは無くなってしまうものなのです。
このような理由から自給率をあげないと、安定した電力供給ができなくなってしまいます。
近年、ロシアによるウクライナ侵攻などによって国際的なエネルギー需給が不安定化しているため、輸入資源に頼らない発電を増やすことが重要だと言えるでしょう。
環境に害のない発電
地球温暖化や気候変動が私たちの生活に与える被害は、今後ますます深刻になっていくと考えられています。そのため世界中でCO2の排出を減らすための動きも加速しています。日本では2030年度までに温室効果ガスを2013年度よりも46%削減することを目標としています。(参照4)
日本で70%以上を占めている化石燃料による火力発電は、発電をおこなうときにCO2が排出されます。CO2は温室効果ガスの一つであるため、火力発電は地球温暖化を進め、環境に被害を与えてしまうのです。
そのため、CO2を排出しない再生可能エネルギーが重要視されています。日本の2022年度の再生可能エネルギーの発電割合は21.7%となっており、日本政府は2030年までに36〜38%まで増やすことを目標としています。
国として力を入れているため、環境に害のない発電はこれからさらに増えていくでしょう。
再生可能エネルギーの重要性が年々高まっています。
再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは資源に限りがある化石燃料と違い、太陽光や風力などのように自然界に常に存在し、繰り返し利用できるエネルギーです。
また、エネルギー源として利用してもCO2を排出しないため、環境に優しいエネルギーでもあります。
再生可能エネルギーは主に太陽光、水力、風力、地熱、バイオマスの5つに分けられます。これらのエネルギーの発電方法について表を見ながら確認していきましょう。
太陽光発電 | 太陽電池によって、太陽の光エネルギーを電気に換え発電する。 |
水力発電 | 水が高いところから低いところへ流れる力で水車を回す。水車とつなげた発電機も回転することで発電する。 |
風力発電 | 風の力で風車を回し、その動力を発電機に伝えることで発電する。 |
地熱発電 | 火山による地熱エネルギーを蒸気や熱水として利用し、タービンを回して発電する。 |
バイオマス発電 | 木くずや食品廃棄物、家畜のふんを燃焼したり、ガス化するなどして発電する。 |
ISEP(環境エネルギー政策研究所)の調査によると、2020年度の日本では再生可能エネルギーを利用した発電量の割合は20.8%です。その中で一番多いのは太陽光発電の8.5%となっています。それ以降は水力発電が7.9%、バイオマス発電が3.2%、風力発電が0.86%で、一番少ない地熱発電は0.25%でした。(参照5)
再生可能エネルギーの発電量を36%〜38%にするためには、各エネルギーの活用をより増やしていく必要があります。
参照5:2020年の自然エネルギー電力の割合 環境エネルギー政策研究所
再生可能エネルギーの発電効率
環境に優しい、繰り返し利用できるなどのメリットが多い再生可能エネルギーですが、太陽光や地熱、バイオマスは発電効率が悪いというデメリットもあります。
発電効率ってどういう意味?
発電効率とは「発電に使うエネルギーをどれだけ電気に変えられるか」を数値に表したものです。例えば、発電効率が50%だと、発電に使うエネルギーが100ならば、50の電気を作ることができます。
発電効率が高いほど、たくさん電気が作れるんだね!
発電方法と発電効率を以下の表を見ながら比較してみましょう。
水力発電 | 約80% |
火力発電 | 約40% |
風力発電 | 約30~40% |
原子力発電 | 約30% |
太陽光発電 | 約20% |
地熱発電 | 約20% |
バイオマス発電 | 約20% |
太陽光発電や地熱発電、バイオマス発電は発電効率が約20%で、火力発電の半分しかありません。そのため、より多くのエネルギーや発電設備が必要になります。
しかし、発電効率を重視して火力発電を増やすとCO2の排出が増え、地球温暖化が進んでしまいます。地球温暖化の抑制が国際的な課題となっている現在では、発電効率よりも環境に対する影響を考えなくてはいけないのです。
太陽光発電は現在の発電効率が約20%ですが、研究と開発が進んでいることで、発電効率が年々上昇しています。シャープ株式会社の2011年の研究では、太陽電池の発電効率を36.9%まで向上させることができました。(参照6)
これが実用化されれば、火力発電の発電効率にかなり近づきます。そのため、再生可能エネルギーの発電割合を増やすためには、太陽光発電がこれからさらに重要となるでしょう。
参照6:世界一のモジュール変換効率40%超を目指す、太陽電池開発中 新エネルギー・産業技術総合開発機構
欧州・アメリカの再生可能エネルギーの割合は?
日本では年々再生可能エネルギーの発電割合は増加していますが、諸外国の再生可能エネルギーの発電割合はどうでしょうか?
ここからは欧州とアメリカを中心に諸外国の2020年度の再生可能エネルギーについて見ていきます。
ドイツ
ドイツの再生可能エネルギーの発電割合は43.6%と半分近くを占めています。火力発電は40.8%と、既に再生可能エネルギーの発電量が火力発電よりも多くなっています。
主要となっている風力発電に加え、太陽光発電を積極的に導入しているため、再生可能エネルギーの発電割合が高くなっています。
イギリス
日本と同じ島国であるイギリスの再生可能エネルギーの発電割合は43.1%です。太陽光発電の導入は少ないですが、島国という特性を活かし洋上風力の利用に力を入れているため、風力発電が主要国の中で一番多く、24.3%を占めています。
2012年から2020年までに再生可能エネルギーを使った発電量が3.6倍も増えており、急速に再生可能エネルギーの導入が進んでいる国でもあります。
アメリカ
世界第2位のCO2排出国であるアメリカの再生可能エネルギーの発電割合は19.7%とヨーロッパの国と比べると少なくなっています。
2022年では再生可能エネルギーの中で風力発電が主要となっていますが、太陽光発電の導入も積極的に行っているため、これからさらに再生可能エネルギーの発電割合が増えていくでしょう。
フランス
フランスの再生可能エネルギーの発電割合は23.8%とヨーロッパの中では低くなっています。しかし、原子力発電が全体の67%を占めているため、火力発電の発電割合は9.2%と再生可能エネルギーよりも少なくなっています。
そのため、エネルギーにおいては既にCO2の削減がかなり進んでいます。近年は再生可能エネルギーの開発と導入も進められているため、原子力発電と両立することで火力発電の割合はさらに少なくなっていくでしょう。
その他
世界第1位のCO2排出国である中国はどうでしょうか?
2020年の再生可能エネルギーの発電割合は27.7%とアメリカや日本よりも多くなっていますが、火力発電が67.7%のため、化石燃料に依存している状態です。
しかし、中国は太陽光発電と風力発電に力を入れているため、発電量が年々増加傾向にあり、再生可能エネルギーへの移行が急速に進んでいます。
カナダでは再生可能エネルギーの発電割合は67.9%と主要国と比べかなり高い水準です。水力発電の発電割合が60%と半分以上を占めているため、このような結果となっています。
ここまでの主要国と比べると日本の再生エネルギーの発電割合は高いとは言えません。しかし、日本の再生エネルギーの導入量は世界第6位、太陽光発電の導入量は世界第3位のため、さらなる再生可能エネルギーの増加に期待できるでしょう。(参照7)
参照7:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案 資源エネルギー庁
まとめ:日本の発電方法は再生可能エネルギーの時代へ
日本はいまだに火力発電に依存している状態ですが、再生可能エネルギーの発電量は年々増加しています。エネルギー自給率を上げるためにも、化石燃料から再生可能エネルギーへと移行していかなくてはなりません。
また、地球温暖化対策としても再生可能エネルギーはCO2を排出せず、環境にやさしいエネルギーであるため重要となります。日本は主要国と比べると、再生可能エネルギーの発電割合はまだ低いため、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入がより一層促進されていくでしょう。
これからの再生可能エネルギーの時代へ向け、個人でできる取り組みがないのかを考えていくことも大切です。再生可能エネルギーの中では、太陽光発電が個人で最も取り組みやすいため、自宅や所有地に太陽光パネルを設置することを考えてみてはいかがでしょうか?