脱炭素社会とは? 簡単・分かりやすい用語解説|地球環境をどう守る?

近年、地球温暖化が国際的な問題となっており、ニュースやインターネットで脱炭素社会やカーボンニュートラルという言葉がよく使われています。

しかし、脱炭素社会とカーボンニュートラルの意味や違いをよくわからない方も多いのではないでしょうか。

そのような方のために、この記事では脱炭素社会の意味やカーボンニュートラルとの違い、脱炭素が急に注目された理由などを簡単に、わかりやすく解説します。

さらに脱炭素の関連用語や脱炭素社会を目指すまでの歴史も説明します。この記事を読むことで、初心者でも脱炭素社会について詳しくなれるため、ぜひ最後まで目を通してみてください。

この記事でわかる事
  • 脱炭素と脱炭素社会の意味
  • 脱炭素の歴史と関連用語
  • 脱炭素が急に注目された理由
  • 脱炭素社会の課題と取り組み
目次

脱炭素の意味

脱炭素とはCO2(二酸化炭素)の排出量を減らして、最終的にゼロにすることです。実際にCO2の排出量がゼロになった社会を「脱炭素社会」と呼びます。

CO2は地球温暖化を進める原因となる温室効果ガスの一つです。地球温暖化が進むと、気温上昇や豪雨など地球環境に深刻な影響を及ぼし、私たちの生活にも被害が及びます。

そのため、地球温暖化を抑制すべく、世界中で脱炭素に向けた動きが高まっています。

日本では、2020年10月に当時の菅内閣総理大臣が、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しています。(参照1)

具体的には、「2030年までに温室効果ガスを46パーセント削減し、2050年までには温室効果ガスを実質ゼロにする」ことが日本の目標です。

この目標を達成するために、国や企業だけでなく私たち個人の取り組みも重要視されています。

参照1:2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方 資源エネルギー庁

脱炭素の歴史と関連用語

お客様

脱炭素を目指す動きはいつから始まったの?

地球未来図

歴史的にはイギリスで18世紀に産業革命がスタートし、酸性雨や公害問題がおこり、環境問題に対する意識が高まり始めました。温室効果ガスの排出量を減らす目標を立てたのは、1997年の京都議定書からです

お客様

京都議定書?

地球未来図

1997年に気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)というところで決められた条約です。この会議は京都で開催され、先進国の温室効果ガス排出量について、各国ごとに数値目標を設定しました。

この目標を達成するために、CO2の削減を目指した動きが本格的に始まったのです

CO2排出量の削減を目指す動きは、京都議定書から始まり、パリ協定でさらに広がっていきます。

脱炭素社会の意味を正しく知るためにも、「パリ協定」や「カーボンニュートラル」などの関連用語について、簡潔にわかりやすく解説していきますね。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量を減らし、吸収量・除去量を増やすことで、排出量=吸収量・除去量にすること」です。

私たちの生活により排出する温室効果ガスをできるだけ減らし、植林により植物の光合成でCO2の吸収量を増やすことで、温室効果ガスの排出量が実質ゼロになります。

お客様

カーボンニュートラルと脱炭素の違いは何?

地球未来図

脱炭素は温室効果ガスの一つであるCO2の排出量をゼロにするのに対し、カーボンニュートラルはCO2だけでなく、メタンやフロンも含めた温室効果ガス全体の排出量を実質ゼロにすることを意味しています

お客様

脱炭素はCO2に注目していて、カーボンニュートラルは温室効果ガス全体に注目しているんだね

脱炭素とカーボンニュートラルは「温室効果ガスを減らして、地球温暖化の進行を抑える」と、広い意味では同じです。

そのため、脱炭素をカーボンニュートラルに言い換えるなど、同じ意味として使われることもあります。

ネットゼロ

ネットゼロとは「温室効果ガスの排出量と吸収量・除去量を同じにして、温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすること」です。

お客様

正味ゼロ?

地球未来図

温室効果ガスの排出量から吸収量・除去量を差し引いた合計がゼロになることです。

私たちの生活で排出する温室効果ガスを完全にゼロにするのは難しいため、できるだけ減らしながら、排出してしまった温室効果ガスを吸収・除去して差し引きゼロにするのがネットゼロの考え方になります

お客様

温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルと同じ意味を持っているんだね

ネットゼロとカーボンニュートラルは表現の仕方は違いますが、同じ意味を持っていると考えましょう。

温室効果ガス

温室効果ガスとは、「地球から出ていく熱を吸収してしまう気体」です。たとえば、CO2やメタンなどが挙げられます。

これらの気体が大気中に増えてしまうと、地表の熱が大気圏の外に放出されなくなり、地球の気温が少しずつ上昇する温室効果が起きてしまいます。

温室効果ガスの中ではCO2の割合が最も多く、2022年度の日本ではCO2の排出量が91.3%です。(参照2)

そのため、地球の気温上昇を抑えるにはCO2の排出量を減らす必要があります。

参照2:2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要) 環境省

CO2の削減

環境問題の解決にはCO2の削減が重要視されています。CO2は二酸化炭素のことで、温室効果ガスの一種です。

なぜ、CO2の削減が重要視されているかというと、温室効果ガスの排出量の中でCO2の割合が最も多く、地球温暖化への影響が大きいと考えられているからです。

産業革命により、化石燃料の使用が増えたことで、CO2の排出量も増加しています。また、住居や農地、工業地帯を作るために森林伐採をしたことで、植物の光合成によるCO2の吸収量が減少しています。

これらが原因となってCO2の排出量が増え続け、さまざまな環境問題を引き起こしているのです。

そのため、世界中でCO2の削減に向けた取り組みが進んでいます。

地球の温暖化

地球の温暖化とは、「大気中のCO2やメタンなどの温室効果ガスにより、地球の気温が上昇すること」です。

近年、温室効果ガスの排出量の増加により、地球の温暖化が進んでいます。

お客様

暑い日が増えた気がするけど、どのくらい平均気温が上がっているの?

地球未来図

世界の平均気温は2020年時点で、1850年〜1900年と比べて約1.1%上昇しています。このままだと、さらに平均気温が上がっていくと予想されています(参照3)

お客様

これ以上暑くなると、熱中症のような健康被害がさらに増えてしまいそうだね

地球の温暖化は1980年代から社会問題となり、1997年には京都で開催された、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で京都議定書が締結され、先進国での温室効果ガスの削減が義務付けられました。

日本では2008年度〜2012年度における温室効果ガス排出量を1990年と比べて6%削減する約束をして、結果的には8.7%の削減に成功しています。(参照4)

しかし、地球の温暖化は進み続けており、さらなる温室効果ガス排出量の削減が必要です。

参照3:カーボンニュートラルとは 環境省
参照4:地球温暖化対策計画 環境省

気候変動

気候変動とは「気温と気象の長期的な変化」のことです。近年(2020年以降)、異常気象が世界各地で起こっており、地球温暖化が原因の気候変動によるものだと考えられています。

地球温暖化で気候変動が激しくなり、世界各地で大規模な山火事や豪雨による洪水が起きています。降水量が極端に少なくなった地域もあり、干ばつによる農作物や生態系への被害も深刻です。

日本でも猛暑や豪雨の被害は増えています。気象庁のデータによると、2023年の日本の猛暑日(最高気温35度以上)と真夏日(最高気温30度以上)の平均日数は、1913年以降で過去最多となっています。(参照5)

また、2023年の6月28日から7月16日までの総降水量は大分県、佐賀県、福岡県で1200ミリ以上、北海道地方、東北地方、山陰及び九州北部地方(山口県を含む)では7月の平年の月降水量の2倍を超えた地点がありました。(参照6)

温室効果ガスの排出を減らさなければ、気候変動が激しくなり、異常気象が増え続けてしまうでしょう。

参照5:気候変動監視レポート 気象庁
参照6:梅雨前線による大雨 気象庁

パリ協定

パリ協定とは京都議定書を引き継いだもので、「2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み」です。2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で締結されました。

COP21はパリで開催され、パリ協定では以下の2つの長期目標を掲げました。

  • 世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて、2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  • できる限り早く世界の温室効果ガス排出量を減らし、21世紀後半には、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする

京都議定書は先進国のみが温室効果ガス排出量の削減に取り組む義務があるのに対し、パリ協定では先進国だけでなく、発展途上国も温室効果ガス排出量の削減に努める必要があります。

パリ協定での日本の目標は、2030年までに2013年と比べて温室効果ガスを26%削減することです。(参照7)

参照7:資源エネルギー庁

再エネ(再生可能エネルギー)

再エネ(再生可能エネルギー)とは太陽光や風力などの自然の中に常に存在し、繰り返し使えるエネルギーのことです。

石油や石炭などの化石燃料は資源に限りがあり、エネルギーとして利用するとCO2を排出します。それに対して、再生可能エネルギーは資源に限りがなく、利用してもCO2を排出しないため、環境にやさしいエネルギーです。

日本では再生可能エネルギーの中で太陽光を多く活用しています。

脱炭素社会を実現するには、CO2を排出しない再生可能エネルギーの利用をさらに増やしていく必要があります。

脱炭素はなぜ急に注目されているの?

脱炭素という言葉は、先ほど解説した「パリ協定」や、その後の日本政府の発表により注目されはじめました。

お客様

日本政府はどのような発表をしたのかな?

地球未来図

2020年10月に、菅内閣総理大臣が2050年までに脱炭素社会を目指すことを発表しました。2021年4月には、2030年までに温室効果ガスを2013年と比べて46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくと表明しています

お客様

パリ協定で掲げた温室効果ガス排出量の26%削減から、46%削減に引き上げたんだね

地球未来図

その通りです。この削減目標は地球温暖化対策推進法という法律にも取り入れられ、地方自治体にも温室効果ガスの排出の削減に向けた取り組みをするよう呼びかけられました

日本政府の発表により、「2050年度までにCO2排出量の実質ゼロを目指すゼロカーボンシティ」を表明する地方自治体が年々増加しています。(参照8)

そして、CO2削減に対する取り組みが企業や個人へも広がったことで、脱炭素は急に注目されはじめたのです。

また、脱炭素が注目された理由として、以下の2つの環境問題が重要になっていることも挙げられます。

  • 化石燃料が枯渇してしまうから
  • 地球の気候変動や温暖化が深刻だから

それぞれわかりやすく説明していきますね。

参照8:地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況 環境省

化石燃料が枯渇してしまうから

化石燃料は資源に限りがあり、このまま使い続けると枯渇してしまいます。世界のエネルギー消費量は年々増え続けており、化石燃料の需要もさらに増加していくことが予想されます。

お客様

化石燃料はあとどのくらいで無くなってしまうの?

地球未来図

2020年時点での調査では、あと約53.5年で使い切ってしまうといわれています。(参照9)

日本で使っている化石燃料はほぼすべてが他国からの輸入によるものです。このまま化石燃料が減っていくと、限りある資源をめぐって世界で競争が起きるため、日本で化石燃料が使えなくなる時代がより早まる可能性もあります

お客様

数十年後には無くなっている可能性があるんだね。化石燃料がなくなるとどのような問題があるのかな?

地球未来図

十分な電気が使えなくなってしまいます。日本では化石燃料を使う火力発電により全体の7割以上もの電気を作っています。
そのため、化石燃料が輸入できなくなると、発電量が大きく減ってしまいます

お客様

電気が使えなくなるなんて大変だ。これからは化石燃料に頼らない発電を増やす必要があるんだね

化石燃料の枯渇によるエネルギー問題を解決するためには、エネルギー源を炭素に頼らない脱炭素を目指す必要があります。

太陽光や風力発電などの繰り返し使える再生可能エネルギーへ切り替えていくことが重要です。

地球の気候変動や温暖化が深刻だから

化石燃料を使うと温室効果ガスの一つであるCO2を排出します。CO2の排出量が増えたことで、地球の温暖化が進み、異常な気候変動を起こしています

令和5年の世界の平均気温偏差は、統計を開始した1891年以降、最も高いです。日本においても、統計を開始した1898年以降、最も高くなっています。(参照10)

このような気温の上昇により、世界各地で豪雨や干ばつ、森林火災などの被害が起きています。

たとえば、カナダでは2023年に起きた森林火災によって約18.5平方キロメートルもの森林が焼失しました。

9月に地中海で発生した低気圧による豪雨では、リビアに住む多くの人に深刻な被害を与えています。

地球温暖化や、それに伴う気候変動を止めるにはCO2排出量を削減しなくてはいけません。

地球環境や私たちの生活を守るためにも、脱炭素は必要なのです。

参照10:気象庁

脱炭素社会の課題と取り組み

日本で脱炭素社会を実現するには社会・企業・個人それぞれに課題と取り組むべきことがあります。それは以下の3つです。

  • 再生可能エネルギーの利用
  • ライフサイクルCO2の削減
  • 省エネを実現できるライフスタイル

それぞれ詳しく見ていきましょう。

再生可能エネルギーの利用

社会で一番期待されているのは再生可能エネルギーの利用を増やすことです。とくに太陽光発電への切り替えが重要と考えられています。

なぜなら、日本ではエネルギー消費によるCO2排出量が全体の8割以上を占めているからです。(参照11)

脱炭素社会を目指すにはエネルギー面でのCO2排出量を減らしていく必要があり、社会は再生可能エネルギーの利用を企業や個人に促していかなくてはいけません。

再生可能エネルギーの中で、日本に取り入れやすいものは太陽光発電です。

そのため、東京都や神奈川県川崎市では2025年4月から一部の建物で太陽光パネルの設置を義務化することを決めています。

また、太陽光パネルの導入に補助金を交付している自治体もあります。

このように、脱炭素社会を実現するには社会が再生可能エネルギーの利用を増やしていくことが重要なのです。

参照1:2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要) 環境省

ライフサイクルCO2の削減

ライフサイクルCO2とは製品の設計から廃棄までに排出したCO2の量を製品の寿命1年あたりに換算したものです。

製品を作るときだけでなく、作った製品を運んだり、廃棄したりするときにもCO2は排出されます。

そのため、製品を作っている企業は、ライフサイクル全体をみて、CO2の排出量を削減しなくてはいけません。

たとえば、製品を作る工場で使う電気を再生可能エネルギーにしたり、製品を運ぶ際には走行中にCO2を排出しないEV(電気自動車)を使ったりするとCO2の排出を削減できます。

また、需要に合わせて生産量を調整し、リサイクルできる素材を使うことで廃棄量が減り、廃棄する際のCO2排出量の削減も可能です。

建築物に関してはライフサイクルが長いため、エネルギー効率のよい建物が必要になってきます。

住宅であれば、1年間で消費するエネルギー量が実質ゼロ以下になるZEH(ゼッチ)にすると、ライフサイクルCO2を大幅に削減できるでしょう。

省エネを実現できるライフスタイル

私たち個人は省エネを実現できるライフスタイルを考えていく必要があります。

お客様

節電や節水を意識するといいのかな?

地球未来図

それも大切です。他には、リモートワークを増やして、通勤時に使われるエネルギーや燃料を減らすこともできます。
会社に出勤する必要があるならば、できる限り移動に自転車や徒歩を使ったり、車を電気自動車にかえたりするのもよいでしょう

お客様

勤めている会社はリモートワークができるから、もっと活用しようかな。リモートワークをすると、家にいる時間が増えるけど、家庭のエネルギー消費量を減らす方法は節電・節水以外にあるの?

地球未来図

家庭のエネルギー消費量を減らすには、省エネ機能のある家電やHEMSを取り入れるのがおすすめです

お客様

HEMSって何?

地球未来図

HEMSとは家庭の電気利用を自動で最適化できるシステムです。家電や太陽光パネルなどの機器と連携することで、電気の発電量や消費量を見える化します。
そのため、エネルギーの無駄遣いが一目でわかり、家庭内での省エネ効果を高めることができますよ

お客様

省エネになるよう自動で調整してくれるなんて、HEMSは便利なシステムなんだね

私たちひとりの衣食住や移動といったライフスタイルに起因する、温室効果ガスの排出量が日本の全体の約6割を占めるという分析もあります。

そのため、リモートワークやHEMSなどを活用して省エネを意識したライフスタイルを実現することが重要です

脱炭素とは、簡単にいうとCO2などの排出を減らすこと

脱炭素とはCO2の排出を減らして、最終的にゼロにすることです。CO2の排出量がゼロを実現した社会を脱炭素社会と呼びます。

地球温暖化や気候変動による異常気象を抑えるには、CO2を含めた温室効果ガスの排出を減らしていかなくてはいけません。

また、エネルギーを化石燃料に頼っていると、数十年後には電気が十分に使えなくなる可能性があります。

そのため、日本では2050年までに脱炭素社会の実現を目指しており、社会や企業は再生可能エネルギーの導入やライフサイクルCO2の削減に取り組んでいます。

脱炭素社会の実現には社会や企業の取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの取り組みも必要です。

自宅に太陽光パネルやHEMSを導入したり、リモートワークを活用したりして、省エネを実現できるライフスタイルを考えてみてはいかがでしょうか。

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