「太陽光発電は停電時に備えて設置するべきだ」という話を聞いたことはありませんか?
確かに、自宅で発電できれば、停電になってもいつも通り電気が使えて安心です。
ただし、太陽光発電の設置と維持には数百万円もの費用がかかります。
実際「何年に一度あるかないかの停電のために本当に設置すべきか」と悩んでいる人も多いでしょう。
さらに、地震や台風などの災害で停電が起きたとき、太陽光発電で必ず発電できるのでしょうか?その保証があるのかと、感じている人もいるかもしれません。
この記事では、
- 停電時に太陽光発電を使える条件と使えない条件
- 停電時に太陽光発電を使うための手順
- 停電対策として設置するメリットとデメリット
をわかりやすく整理し、解説します。
この記事を読むことで、「太陽光発電を停電に備えて導入すべきか」を冷静に判断できるようになります。
ぜひ参考にしてみてください。
太陽光発電は停電時に使える?【結論:条件付きで使える】
「太陽光発電は停電時に使える」と聞いたことがある人も多いでしょう。
しかし正確には、すべての家庭で停電時に太陽光発電が必ず使えるわけではありません。
停電時に太陽光発電を使うためには、次の4つの条件を満たす必要があります。
条件①:自動制御装置を解除している
停電が発生すると、太陽光発電システムは安全装置の働きで自動的に停止します。
家庭用の太陽光発電は電力会社の送電線(系統)とつながっており、停電時に発電を続けると、復旧作業を行う作業員が感電する恐れがあるためです。
そのため、太陽光発電システムと合わせて設置するパワーコンディショナー(直流を交流に変換する装置)は、
停電を感知すると瞬時に発電を止めるように設計されています。
これによって、一般の人々はもちろんのこと、復旧作業にあたる作業員の安全を守ることができます。
では、太陽光システムの運転を再開するにはどうしたらいいのでしょうか?
停電中に電気を使いたい場合は、「自立運転モード」と呼ばれるモードに手動で切り替えが必要です。このモードを起動すると、発電した電気を家電などに使うことができますが、
すべての家電を動かせるわけではなく、最大出力は1,500W(ワット)までに制限されています。
なお、「自立運転モード」の具体的な使用方法は、記事の後半で詳しく紹介します。
合わせて読みたい記事:太陽光パネルのメンテナンス・購入前に知っておきたい費用・頻度
条件②:天候や日照条件が整っている
当たり前の条件なのですが、太陽光発電は太陽が出ていないとあまり発電ができません。
晴れの日に比べると、曇りの日の発電量3〜5割程度、雨の日には1〜2割程度になるといわれています。
台風や豪雨などの悪天候が理由で停電が起きた場合には、そもそも太陽光パネルで発電することができない状況におかれるかもしれません。
また、夜間は発電をすることができません。このように太陽光システムを設置していても、一日中すべての電気を自家発電だけでまかなえるわけではなく、発電の足りない日や夜間は送電線からの電力を購入しています。
「夜でも電気を使えるようにしたい」場合は、 後ほど紹介する蓄電池との組み合わせを検討すると安心です。
合わせて読みたい記事:蓄電池で災害時も安心!停電前に知っておきたい蓄電池の知識
条件③:太陽光パネルや関連機器が正常に動いている
地震や台風などの災害を伴う停電では、太陽光パネルや接続機器そのものが損傷する可能性があります。その場合も発電ができず、結果停電中に電気が使えないことがあります。
過去の災害報告を調べてみると、家庭用の太陽光パネルが台風によって飛ばされたり、パネル設置用の架台が破損したという事例は、全国でもごく限られた数にとどまっていますので、この条件は深刻に心配する必要はないといえるでしょう。
ただし台風等の影響で架台が弱まったり、パワーコンディショナー等の周辺機器が浸水等の影響で故障する可能性もあります。災害後には、まずご家庭でできる安全な範囲での破損状況のチェックを行い、異常があれば業者に連絡をして確認をしてもらいましょう。
また災害による故障には、補償が適用される場合もありますので、購入時に補償条件の確認も忘れずにしておきましょう。
合わせて読みたい記事 太陽光パネルの保証期間は?買う前に知りたいメーカーごとの違い
条件④:電気を十分に蓄電できている
太陽光発電と蓄電池を併用している家庭でも、蓄電容量には限界があります。一般的な家庭用蓄電池の容量は4〜10kWh程度で、この量では冷蔵庫や照明、通信機器などを通常通り使っていると、1日〜2日で使い切ってしまいます。
停電が数日続くような大規模災害時は、日照不足や連日の悪天候で十分に再充電できないため「蓄電池があっても実際は使えなかった」という声につながっています。
合わせて読みたい記事:蓄電池は元が取れないの?太陽光と組み合わせればメリットがたくさん!
条件⑤合計1500W以下の最大出力
自立運転モードでは、通常、電化製品の合計出力の上限が、最大1,500Wまでに制限されています。つまり平常時に比べると、同時に使える電化製品が少なくなります。
例えば、以下の電化製品をすべて同時に使うと合計で400〜500W程度になります。
- スマートフォンの充電(約5W)
- ノートパソコン(約50W)
- LED照明(約20W)
- 扇風機(約30W)
- 冷蔵庫(150〜300W前後)
しかし、ここに電子レンジ(1,000W)やドライヤー(1,200W)などを追加すると、1500Wを超えてしまうため、普段のような使い方が停電時もできるわけではありません。
日本での停電はどれくらい起きている?
そもそも日本ではどのくらい停電が起きているのでしょうか?「停電の心配」と言いながらも、最近停電を経験したという人は実は少ないはずです。日本の電力インフラは世界トップクラスの安定性を誇っており、大災害が起きない限り、停電の影響を受けることはあまりありません。
①設備不具合による停電
日本の停電は世界的に見ても非常に少なく、復旧までの時間も早いため日常生活に影響が出づらいのが実情です。
東京電力が公表しているデータ(参照1)によると、日本では一般家庭が経験する停電の平均発生回数は年間0.13回、つまり5〜10年に1度あるかないかというレベルになります。また、1回あたりの停電時間も平均で10〜20分程度とされています。
送電線の老朽化や電柱の倒壊などが原因の場合は、電力会社の迅速な復旧作業により、多くの地域では数十分〜1時間以内に電気が戻っています。
参照1:東京電力
②台風や地震などの災害による停電
災害による停電は、復旧までに時間がかかります。たとえば、台風や地震では、過去に一部地域で数日〜1週間以上電気が止まったケースもありました。このような長期停電の際には、太陽光発電や蓄電池が大きな力を発揮し、実際にライフラインになったというケースも多く報告されています。

このように「停電に備えることは大切ですが、日本は日常的に停電に悩まされる国ではない」という事実です。
だからこそ、太陽光発電を導入する際は、停電対策だけを目的にするよりも、「電気代の節約効果」や「環境への貢献」についても、そのメリットをよく理解しておくことをおススメします
太陽光発電を停電時に使う方法
先に紹介したとおり太陽光発電を停電時に使うには、「自立運転モード」を起動することが必要です。
ここでは、パワーコンディショナーの基本的な設定手順と、実際に電気を使う際の注意点をまとめます。
① 自立運転モード(パワーコンディショナー)の設定
パワーコンディショナーとは、太陽光パネルでつくった直流の電気を家庭用の交流電気に変換する装置です。停電が起きると安全のために自動停止しますが、「自立運転モード」を起動することで一部の電気を使えるようになります。
自立運転モードへの切り替えは、以下のような流れになります。
- 取扱説明書で「自立運転モード」への切り替え方法を確認する
- 主電源ブレーカーをオフ
- 太陽光発電ブレーカーをオフ
- 自立運転モードに切り替え、「自立運転用コンセント」を使用する
お使いのメーカーによって、詳細手順や注意点が異なりますので、必ず取扱説明書で手順をご確認ください。主要メーカーのウェブサイトは以下の通りです。
【主要メーカーウェブサイト】
合わせて読みたい記事:【メーカー取材】長州産業の太陽光パネル・蓄電池はなぜ性能がいいのか聞きました
② 自立運転の注意点
自立運転モードは通常のモードと異なる注意点がありますので、以下を事前に把握しておきましょう
【自立運転モード・事前チェックリスト】
☑ コンセントの場所を確認
自立運転モードでは、普段と同じコンセントから電気をとることはできません。非常時専用のコンセントを使う必要があります。通常、室内の壁または屋外の場合はパワーコンディショナー本体の側面にコンセントがあります。いざというときに備えて、平常時から場所を確認しておきましょう。
☑ 延長コードと災害グッズを準備しておく
非常時専用のコンセントしか使えないため、延長コードがあると便利です。また、緊急時への備えという意味では、太陽光発電システムだけでなく、ランタン、モバイルバッテリー、電池式のラジオなども備えておきましょう。
☑ 停電復旧時の戻し方も確認しておく
停電から復旧したら、通常の「連系運転」に戻す必要があります。こちらも各メーカーの手順に沿って安全に戻します。連系運転に戻さないままだと、普段のコンセントが使えません。また売電契約をしている家庭の場合は、売電ができません。
まとめ:太陽光発電を停電に備えて購入するメリット・デメリット
太陽光発電システムがあり、「自立運転モード」に切り替えをおこなえば、電気量の制限はあるものの、災害時や停電時にも電気を使うことができます。
しかし、日本では自宅が停電になることは滅多にないので、停電対策のためだけに太陽光システムを設置するよりも、太陽光発電設置のメリットの一つと考えることをおススメします。
太陽光発電を停電対策で導入するメリット
- 地震や豪雨などの大きな災害時に電力が格段に確保しやすくなる
- 停電時にも電気が使える安心感
太陽光発電を停電対策で導入するデメリット
- 災害時の悪天候などの理由で100%発電が保証されるわけではない
太陽光パネルや蓄電池の設置のメリットはむしろ電気代の節約や環境への貢献にあります。
東京都で新築住宅への太陽光システム設置が義務化されたように、環境を守るためにも太陽光システムの導入が世界的に促進されています。
そのため日本の各自治体でも2025年現在、手厚い補助金制度が準備されています。
東京都では、太陽光発電や蓄電池の設置に補助金が用意されており、条件を満たせば数100万円単位の補助金を受けられる場合もあります。
停電対策も兼ねて賢く導入したい方は、まずは無料見積相談をご利用ください。