海は私たちにたくさんの恵みをもたらす大切な存在です。
しかし近年、海洋汚染はどんどん深刻になっています。例えば海洋プラスチックごみは、世界で年間約800万トンも発生しており、このままいけば2050年には魚の量より多くなると言われているのを知っていますか。それほどのごみが海にはあるのです。
ごみだけではありません。家庭から出る生活排水や、船から流出する油なども海洋汚染の原因となっています。
この記事では、海洋汚染の原因や影響、海を汚染しないためにはどうすればいいのか、私たちにできることをしっかりと学ぶことができますよ。
海洋汚染ってどういうこと?
海洋汚染とは、人間の活動で発生するゴミを海に投棄したり、工場や生活排水、船舶の油を流出したりすることで、自然環境や生態系、人の暮らしに悪影響を及ぼすことです。
海洋への汚染物質や廃棄物などの排出が続けば、海洋へ汚染はどんどん蓄積されていきます。すでに世界の海に廃棄されているプラスチックごみは、合計で1億5,000万トンにもなるといわれています。さらに年間800万トンのゴミが新たに海に流れ着いており、これは重さにするとジェット機5万機分にもなります。(参照1)
みなさんもニュースで海鳥が船からの廃油で油まみれになった姿や、プラスチック製の袋や網が体にからんだウミガメの姿を見たことはありませんか?
このようなプラスチックごみや有害な物質が海に大量に廃棄されることで、魚類、海鳥、アザラシ、ウミガメなど、多くの生物が傷つき命を落としているのです。そしてこれらの事態は、海から多くの恵みを受けている私たち人間にも無関係ではありません。
参照1:WWFジャパン
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海洋汚染の原因を知ろう

海洋汚染の原因にはどんなものがあるのかしら?



まず大きく分けて、プラスチックごみ、工場排水や生活排水による陸からの汚染、そして海に航海している船からの油や有害物質の排出があげられます。



それぞれ詳しく教えて。



まずはプラスチックごみから見ていきましょう。プラスチックの生産量は 1950〜2019年の約70年間で、年間200万トンから4億6000万トンと、なんと230倍にもなりました。(参照2)こうしたプラスチックごみはきちんと処分されずにポイ捨ても多くされています。そうすると雨や風によって河川に入り、最後は海に流れつき、海洋プラスチックとなり、海の環境を汚染します。これらはゴミの分別を徹底することや、使用を減らすことで改善につなげることが可能です。



陸からの汚染は何があるの?



台所や風呂・トイレなど人の営みによる生活排水や、工場や畜産などからの排水があります。これらの排水は海や川の水を汚す大きな原因となっています。例えば、お家で作って食べるラーメンですが、残り汁をそのまま海や川に流してしまった場合、魚が住める水質に戻すには、浴槽8.2杯もの水が必要となります。(参照3)



え!そんなに?じゃあ、ラーメンの汁は新聞に吸わせたり、固めたりしてゴミにした方がいいのね。



そういう努力はとても大切ですね。次に船からの汚染ですが、船が海を航行する時に、運行に伴って生じる油、有害液体物質などが排出され、海を汚染してしまいます。2023年の日本の油による海洋汚染は259 件もありました。主な原因は、作業中の取扱不注意、船舶海難、機械の破損などで人為的なものがほとんどです。(参照4)そのため、海上保安庁は巡視船艇・航空機等による監視を行っています。



海を汚す原因を知ることで、汚さないための取り組みも見えてくるのね!
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海洋汚染の影響は?
海洋汚染が進むとどのような影響が現れるのでしょうか。ここでは次の3つの視点から解説していきましょう。
地球温暖化が進む
2018年にハワイ大学の研究者らは、プラスチック廃棄物が太陽光により劣化すると、強力な温室効果ガスであるメタンとエチレンを放出するという研究結果を報告しています。
またレジ袋など、最もよく使われているプラスチック素材が温室効果ガスを最も多く放出することもわかっています。このようなプラスチックごみは海に流れ着くことで劣化が早まる上、自然に分解されることはないため、地球温暖化を助長する可能性があります。(参照5)
生物多様性の損失
海洋汚染は生物多様性にも大きな影響を及ぼします。どのような影響があるのか具体的に紹介しましょう。例えば世界では死んだ海鳥や魚の胃の中から誤って食べたプラスチックが多く見つかっています。また漁業で使用され海中に放棄された網やかごなどが、ウミガメや海鳥などの水生生物に長期間危害を加えることもわかっています。
2011年にニュージーランド北島のタウランガ沖で発生した船舶事故では、およそ350トンの油が海に流出し、100羽を超える海鳥が命を落とし、92羽が救護機関に保護され手当てを受けました。(参照6)これらの事態は海の生きものの生命を脅かし、生物多様性に深刻な損失を招きます。
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暮らしへの影響
地球の表面の70%を占めるのは海です。その海が汚染されることは、私たちの日常生活にも無関係ではありません。例えば日本近海で獲れる魚介類にも微細なマイクロプラスチックが含まれていたことがわかっています。
東京農工大学が2015年に行った調査では、東京湾で釣ったカタクチイワシ64尾中49尾からマイクロプラスチックが検出されました。人間が魚介類からプラスチックを食べても、排出されるため問題ないという指摘もあります。しかし化学物資の添加剤などは、プラスチックを通じて生物組織に移ることが確認されています。そのため有害な化学物質が人体に蓄積する可能性は否定できません。(参照7)
また前段で、海洋汚染は地球温暖化を増長させる可能性もあることをお伝えしましたね。地球温暖化により気温上昇や異常気象が続くことは、私たちの生活をさまざまな面で圧迫します。わかりやすい例をいくつか挙げましょう。
- 冷房多用で電気代が増加する
- 気温上昇による不作で農産物や果物が高騰する
- 熱中症や感染症による健康への影響
このように海洋汚染は、私たちの日々の暮らしにも大きく影響を与えているのです。
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日本は海洋汚染にどう関わっている?



海洋汚染による影響の深刻さはわかったわ。でも日本は海洋汚染に具体的にどう関わっているの?



2019年の使い捨てプラスチックの廃棄量は世界全体で1億3000万トン。日本の廃棄量は471万トンで第4位でした。(参照8)また日本のプラスチックの生産量は、2023年で887万トンに上ります。(参照9)リサイクルも行われていますが、日本が世界の中でもプラスチックを多く生産し消費していることは事実です。つまり海洋プラスチック問題に大きく関わっているといえますね。



海洋汚染の中でも海洋プラスチックの問題は深刻だものね。



2020年の日本の海洋ごみ実態把握調査では、漂着ごみの第一位はボトルのキャップやふたで全体の17.6%もありました。次いでプラ製ロープ・ひもで16.6%、ペットボトは6.9%です。その他にも多くのプラスチック製品が漂着ごみとして上がっています。(参照10)



日本はプラスチックを多く使うからこそ、きちんと廃棄やリサイクルして海を汚染しない努力が必要なのね!
参照8:一般社団法人日本エシカル推進協議会
参照9:一般社団法人プラスチック循環利用協会
参照10:環境省
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恵みの海のために私たちができること
ここでは私たちに多大な恩恵を与えてくれる恵みの海のために、できることを紹介していきますね。
海の豊かさを知る
国連が提唱しているSDGs目標14では「海の豊かさを守ろう」です。「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ためのアクションが示されています。
海や水族館に行き、海の生物多様性について知り、海の豊かさを体感したり、実際に海に行ってごみが落ちていないか確認したり。身近なところから海の豊かさや現状を体験してみましょう。
3R(リデュース・リユース・リサイクル)の実践
3Rとは、リデュース(ごみを減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(資源として再生する)のことです。さらにひとりひとりが暮らしの中で海を汚染しないためには、次のようなアクションが重要です。ぜひ自分にできることから取り組んでみましょう。
- エコバックを持参する
- マイボトルを持ち歩く
- 店でプラスチックのスプーンやフォークを貰わない
- シャンプーや洗剤には詰め替え用を使う
- 使用済み食用油(廃食油)は無料回収に出しリサイクルする
- 海・川・山のレジャーではごみを持ち帰る
- 屋外で出たごみは家に持ち帰って処分する
- ごみのポイ捨てはしない
- 河川敷や海岸の清掃活動に参加してみる
- 自治体などの生物多様性の保全活動に参加してみる
環境省では海洋プラスチック問題への取り組みの一つとして、「Plastics Smart(プラスチック・スマート)」キャンペーンを実施しています。各自治体でもさまざまな取り組みを行っていることがありますので、ぜひ調べてみましょう。
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エコラベル商品を買う
地域の美味しい新鮮な魚介類を選んで購入することは、海の生物多様性を保全してきた漁業者の支援につながります。近年は、環境配慮がされたエコラベル商品「MSC」も販売されています。「MSC」商品は、水産資源と環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の証です。
これらを購入することで、生物多様性の保全に取り組む生産者を商品購入というかたちで支援することができます。(参照11)
参照11:MSC (海洋管理協議会)
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まとめ
海洋汚染の原因や影響、海を汚染しないためにはどうすればいいのか、私たちにできることをわかりやすく解説しました。わたしたちに多くの恩恵を与えてくれる豊かな海を、これ以上汚染しないためには、一人ひとりができることをひとつでも取り組むことが大切です。
難しく考える必要はありません。この記事を参考にひとつでもできることを、ぜひ始めてみてくださいね。
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