サステナブルファイナンスの実情・“本当”に環境に優しい取り組みとは?

サステナブルファイナンス 事例

サステナブルファイナンスとは、環境問題や社会問題、企業倫理を考慮して金融活動を行うことです。多くの企業が「サステナブル」を掲げ、頻繁に見かける言葉になりましたが、実際にサスティナブルファイナンスを取り入れた企業がどの程度、環境に貢献しているのか、内情まで理解しているという人は少ないのではないでしょうか?

サステナブルファイナンスがこれまでの環境配慮と違うのは、実績を数値化し、達成数値目標を設定することがあげられますが、過去の「環境活動」と混同している人も多くいます。

グリーンウォッシング(環境に貢献しているふりをすること)という言葉まで登場する昨今、金融や投資の世界でサスティナブルファイナンスが、どのように取り入れられているのか、参考にすべき事例を紹介していきます。

目次

サステナブルファイナンスとは

サステナブルファイナンスとは、地球温暖化のような環境問題、人権問題や貧困などの社会問題に配慮した持続可能な取り組みに、お金の流れを向ける金融の考え方です。 

地球温暖化や貧困などの世界が抱える大きな課題を解決するには、政府や企業、私たち個人が一体となって取り組む必要があります。しかし、そのためには膨大な資金が必要です。

サステナブルファイナンスは、ただ利益を追求するだけでなく、地球環境や社会の持続可能性を考慮してお金を使うことで、これらの課題解決を金融面から後押しする目的があります。

そのため、サステナブルファイナンスではESGに配慮しているかが重視されます。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉です。それぞれの取り組みとして、以下が挙げられます。

  • 環境(Environment):CO2排出量の削減、プラスチックごみの削減など
  • 社会(Social):労働環境の改善、地域社会への貢献など
  • ガバナンス(Governance):不正防止、透明性の高い経営など

持続可能な社会の実現が求められている現代社会では、私たちの暮らしや地球の未来にとって良い影響を与えるプロジェクトや企業に投資や融資を行う、サステナブルファイナンスの重要性が高まっています。

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サステナブルファイナンスと環境配慮の違い

サステナブルファイナンスとこれまでの環境配慮には企業内での位置づけに違いがあります。古くは各企業が業績をあげ、お金を儲けること自体が美徳とされていましたが、1990〜2000年代の社会的責任投資(SRI)をはじめ、これまでも環境配慮の考え方は存在していました。

2010年代前半になるとESGへの意識が欧米を中心に高まり、多くの企業がCSR(企業の社会的責任)や環境報告書を発行し、再生可能エネルギー投資(太陽光発電や風力発電で作った電気を売って利益を得るビジネス)やエコ商品の開発が進んでいきます。


ただし、この時期は「企業のイメージ向上やリスク管理」が中心で、財務との結びつきは弱い状態でした。つまり、これまでの環境配慮は企業が社会奉仕のために善意で行っていたり、企業のブランド化のためにイメージ戦略として行っていたりするものでした。

現代のサステナブルファイナンスは、経営や投資判断を左右するものです。企業の補助的な慈善活動ではなく、社会的・環境的成果を数値で示す必要があります。

また、国際的な組織であるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が情報開示を推奨していることもあり、企業に対してサステナブルファイナンスに関する開示義務を設ける国が増えています。

このように、企業の自主性に任せられていたものが、社会一体となって取り組むべきものへと変化しているのです。

【サステナブルファイナンスとこれまでの環境配慮の比較】

これまでの環境配慮サステナブルファイナンス
企業内での位置づけ善意・ブランド戦略・社会奉仕投資の判断基準、経営戦略の重要な柱
データの活用方法CO₂排出量削減や再エネ発電量などの環境的成果を示す環境的成果だけでなく社会的成果も数値で示す(CO₂排出削減量、雇用創出数など)
その他財務との結びつきが弱い財務リスクとして評価しリスクを見える化
報告方法主観、自主的、任意開示義務あり、具体的な数値
政府や国のかかわり方税制優遇や補助金で環境対策を促す情報開示義務化や市場の仕組みづくりにより持続可能な社会への投資を誘導する

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サステナブルファイナンスの関連用語

サステナブルファイナンスを理解するうえで知っておきたい関連用語を紹介します。

用語意味
ESG投資企業の財務状況だけでなく、環境、社会、カバナンスへの取り組みも評価して、投資先を決める投資方法
グリーンボンド企業や地方自治体などが環境問題解決に貢献するプロジェクトの資金を集めるために発行する債券
サステナビリティ・リンク・ローン借り手の企業が環境問題や社会問題を解決する具体的な目標を設定し、その達成度合いに応じて金利が変わるローン
グリーンウォッシング排除企業が実際には環境に配慮していないのに、あたかも環境に優しいかのように見せかける行為をなくすこと
地球未来図

これらの用語を踏まえて、ここからはサステナブルファイナンスの現状や問題点について解説します

サステナブルファイナンスの現状

現在、サステナブルファイナンスは世界中で急速に拡大しています。気候変動や格差、人口減少など社会的な課題の解決に大きな資金が必要であるからです。

とくに、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする脱炭素に関しては、2030年までに世界全体で年間の投資を4兆ドルに増やす必要があると試算されています。(参照1)

日本では、サステナブルファイナンスを推進するために、金融庁や東証によるESG開示が強化されています。2023年1月には、企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が義務化されました。(参照2)

記載する内容には、以下4つの項目があります。

  1. カバナンス(全企業が開示)
  2. 戦略(一部を全企業が開示)
  3. リスク管理(全企業が開示)
  4. 指標及び目標(一部を全企業が開示)

企業はガバナンス体制やリスク管理のプロセスを開示しなくてはなりません。また、人材育成方針や男子の育児休暇取得率なども開示の対象になります。2025年3月には日本初のサステナビリティ開示基準が発表され、今後は新たな基準にもとづいて開示が義務付けられる予定です。(参照3)

参照1:金融庁
参照2:金融庁
参照3:SSBJ

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サステナブルファイナンスの問題点

急速に広がるサステナブルファイナンスですが、一方でいくつかの問題点も指摘されています。その一つがグリーンウォッシングです。グリーンウォッシングとは、実際には環境に配慮していないにもかかわらず、あたかも環境に優しいかのように見せかける企業や商品のことを指します。

たとえば、企業がプラスチック製ストローを100%リサイクル可能な紙製ストローに切り替えたとしましょう。しかし、実際には紙の繊維が厚すぎるなどの理由でリサイクルが困難であり、ほとんどが燃えるごみとして処分されていた場合、これは、グリーンウォッシュにあたります。

グリーンウォッシングか、それとも環境に本当に貢献しているのかどうかを見分けるには、「何年までにCO₂を何%減らす」のような数値目標があるか、また、リサイクルが本当に行われたという事実の追跡や、データに根拠があるかを確認する必要があるでしょう。

そして、突き詰めれば経済活動自体が環境に悪いという専門家もいます。

たとえば、大手のコーヒーチェーン店がグリーンクレジットを購入したり、再生紙素材のカップやストローを取り入れたりしても、大手企業が世界的に店舗を建設しブランド化したコーヒー豆を海外から輸入して、全国に輸送していること自体が環境にとってプラスになりません。

とくによく批判されるのが衣料・アパレル業界です。サステナブルな素材を使ったコレクションをだしたり、洋服のリサイクルをおこなったりしても、毎シーズン新作の洋服を発表して、大量販売すること自体が地球にやさしくはないといえます。

衣料品においては、そもそも販売する量が減ること自体が環境にいいといえるかもしれませんが、それではファッションブランドは商売を続けることができません。

このような消費者の納得感と現実のギャップは難しい点です。経済活動と環境配慮の両立を少しでも良い方向にすすめるには、私たち一人ひとりが環境問題に関心をもって知識を身につけ、納得できる選択をしていくことが大切です。

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 日本のサステナブルファイナンス事例3選

ここまでの内容を踏まえて、国内外でのサステナブルファイナンスの事例を見ていきましょう。まずは日本の事例を3つ紹介します。

1. サステナビリティ・リンク・ボンド 滋賀県

滋賀県は、自治体として国内で初めて「サステナビリティ・リンク・ボンド」を発行しました。サステナビリティ・リンク・ボンドとは、ESGに関連する目標達成と連動する新しいタイプの債券です。具体的な目標と達成状況に応じた対応をあらかじめ設定することで、借り入れた資金を自由に使えます。(参照4)

滋賀県は「県庁にて、2030年度に2014年度比で温室効果ガス排出量50%削減」を目標として掲げ、達成できなかった場合は、温室効果ガス削減の財源として債券発行額の0.1%を追加拠出すると設定しました。

2022年の第1回の公募では、発行額50億円に対して約10倍(約480億円)の需要が集まり、即日完売しています。滋賀県の新たな挑戦は、自治体が金融を通じて持続可能な社会づくりに貢献する先進的な事例として注目されています。

参照4:滋賀県

2. SDGsリンクローン・雪国まいたけ

きのこの生産で有名な雪国まいたけは、「SDGsリンクローン」を活用しています。SDGsリンクローンは、企業が設定したSDGsに関連する目標の達成状況に応じて、金利などの条件が変わる融資です。

株式会社第四北越銀行と契約し、温室効果ガス排出量の削減を目標に25億円の融資を受けました。具体的には、2030年度までに2020年度と比べて温室効果ガス排出原単位(生産量ベース)を約35%削減することを目標として掲げています。(参照5)

達成状況を毎年度ごとに評価し、目標を達成すれば金利面で優遇されるため、温室効果ガス削減に向けた積極的な取り組みが期待されます。

参照5:株式会社第四北越銀行

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3. ESGを取り入れたファンド・長野県飯田市

長野県飯田市は、地域の金融機関や企業と連携し、ESG(環境・社会・企業統治)の視点を取り入れた投資ファンド「おひさまファンド」を立ち上げました。おひさまファンドは、市民が出資して地域の再生可能エネルギー事業(太陽光発電など)を推進する日本初の試みです。

集められた資金は「おひさま発電所」の設置費用や地域の再生可能エネルギー事業に充てられ、事業収益の一部が出資者に分配されます。

作られたエネルギーは市民が優先的に活用できることになっているため、地域の電力を地域の再生可能エネルギーでまかなうエネルギーの地産地消にもつながっています。

参照6:長野県

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 海外のサステナブルファイナンス事例3選

海外でもさまざまな取り組みが進められています。ここでは3つの事例を紹介します。

1.  NextGenerationEUグリーンボンド

EUでは、「NextGenerationEUグリーンボンド」を発行しています。2021年10月から発行を始めており、120億ユーロを調達したことで世界最大のグリーンボンドとなりました。(参照7)

グリーンボンドは、クリーンエネルギーやエネルギー効率化などに活用され、EU経済の脱炭素化を進めています。グリーンダッシュボードを開設し、NextGenerationEUグリーンボンドがどのように使われているかを透明化しています。

また、2021年にはサステナブルファイナンスに関する開示を義務化するためにSFDR(Sustainable Finance Disclosure Regulation)が導入されました。SFDRは、金融商品を対象にした開示義務です。(参照8)

金融商品を扱う事業者は、自社の投資判断におけるサステナビリティリスクや金融商品のESG情報などを開示する必要があります。この制度によりグリーンウォッシュの排除にも取り組んでいます。

参照6:EURO
参照7:EURO

2. グリーンウォッシュ訴訟・アメリカ

アメリカでは、グリーンウォッシュに対する訴訟が起こされており、「環境にやさしい」と偽る企業に厳しい目が向けられています。

2024年9月には、アメリカのカリフォルニア州が大手石油会社のエクソンモービルに訴えを提起しました。内容は、エクソンモービルによるプラスチックの生産とリサイクルに関する広告が、プラスチック汚染を悪化させたというものです。(参照9)

カリフォルニア州は、広告の差し止めや住民に対する損害補償などを求めており、現時点では裁判所の判断を待っている状態です。

グリーンウォッシュに対する訴訟はアメリカだけでなく世界各国で増加しており、グリーンウォッシュ排除に向けた動きが活発化しています。

参照9:TMI総合法律事務所

3. ブルーボンド・フランス

フランスのBNPパリパ銀行は、海洋保護や水資源管理に特化した新しいタイプの債券「ブルーボンド」を発行しています。

従来のグリーンボンドが主に地球温暖化対策や再生可能エネルギーに焦点を当てていたのに対し、ブルーボンドは海の生態系保護や水質保全など、特定の分野に特化した資金調達手段として注目されています。

海はCO2を吸収し気候調整の役割を担うだけでなく、約3兆ドルと推定される巨大な経済圏です。一方でプラスチック汚染や海洋資源の過剰搾取など人間活動による脅威に直面しています。

このような背景からBNBパリパ銀行は、海を守るためにブルーボンドを発行し、企業による海洋保護を推進しています。

参照10:BNP PARIBAS

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まとめ:サステナブルファイナンスのこれから

サステナブルファイナンスは持続可能な社会の実現において重要な役割を担っています。グリーンウォッシングのような課題もありますが、日本や世界の具体的な事例からも分かるように、サステナブルファイナンスは着実に広がっています。

企業の情報開示義務も進み、より透明性の高い選択ができる時代になりつつあるでしょう。持続可能な社会を実現するには私たち一人ひとりがサステナブルファイナンスに関心を持ち、意識的に選択を変えていく必要もあります。

私たち消費者も、具体的な数値や根拠にもとづいてサステナブルな取り組みをしている企業の商品を選ぶことで、サステナブルファイナンスの流れを後押しできるでしょう。

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