近年急速に活用が進んでいる生成AIですが、それに伴い環境負荷が増加していることをご存知でしょうか。
生成AIのデータ保存機器を設置しているデータセンターは、大量の電力や水を消費しCO2排出量の増加も予想されているため、環境への影響が大きいといわれています。一方、生成AIの発展は、気候変動対策に有効ともいわれています。
今回は生成AIの基礎知識から、環境負荷が生まれる原因や対策、そして世界や日本の生成AIの動向や可能性についてわかりやすく解説します。生成AIと環境負荷について、しっかりと学べるので、ぜひ参考にしてくださいね。
生成AIとは
生成AIとは、学習データをもとにテキストや画像など新たなデータを生成する「人工知能」のことで、正式には「Artificial Intelligence」といいます。
ここでは、生成AIについて特徴や種類など、基礎的知識をわかりやすく解説していきましょう。
生成AIの特徴
生成AIは指示や条件を与えることで、それに応じた文章や画像を生成し、新しいコンテンツを生みだすことができます。これまでのAIと違い、より創造に近い働きをすることが最大の特徴です。
従来のAIはデータの整理・分類を学習し、決められた範囲のアクションを自動化したり、学習結果に基づいた予測や特定を行ったりすることがメインでした。一方、生成AIは大量のデータから特徴を抽出する「ディープラーニング(深層学習)」という方法で学習を重ね、人間が作り出したかのような新たな創造物を生み出します。
生成AIの種類

生成AIではどんなことができるの?



生成AIはさまざまなことに対応できます。テキストやアート、音楽、動画まで生成することが可能です。例えば「茶色くて目の大きな子犬のイラストを作成して」と、生成AIに指示することで、生成AIはこれまで学習したデータから指示通りの画像を生みだし、出力してくれます。



どうして、そんなにたくさんの種類のものが生成できるのかしら?



ネットの膨大なデータからパターンや関係を学習し、さまざまなコンテンツを生成するようにプログラムされているからです。



生成AIにはどんな種類があるの?



テキストなら、「ChatGPT」「Claude」「Gemini」などがあり、必要に応じた文章を作成してくれます。画像生成なら「Canva」「Adobe Firefly」などがあり、細かい指示や条件を与えることでリアルなものからアニメ風のものまで、画像を出力することができます。現在は、オンラインで使用可能な生成AIがたくさんあり、マーケティングやセールス、教育、小説や法律まで多分野での活用が期待されています。
生成AIが注目される背景
生成AIが注目されている背景には、世界のAI市場の拡大が挙げられます。AI市場の売り上げは、2022年には前年と比較して78.4%増加の18兆7,148億円まで成長すると予測されました。日本のAIシステム市場規模は、2023年に6,858億7,300万円で前年比34.5%増加し、今後、2028年には2兆5,433億6,200万円まで広がることが予想されているのです。
特に世界の生成AI市場は、2023年の670億ドルから2032年には1兆3,040億ドルの成長が見込まれています。(参照1)
【世界の生成AI市場規模の推移及び予測】


参照1:情報通信分野の現状と課題 総務省
生成AIと環境負荷
生成AIと環境負荷は、結びつかないイメージがあるかもしれませんね。しかし生成AIを使用すればするほど、実は膨大な電力や水資源を消費し、大量のCO2を排出しているのです。
ここでは生成AIによって発生している環境負荷について、詳しく見ていきましょう。
生成AIデータセンターによる大量の電力消費



データセンターってなにかしら?



データセンターというのは、データを処理・保存するサーバーやストレージシステム、ネットワーク機器、そのほかサーバーを維持するための補助機器を設置している施設のことです。



なぜ生成AIのデータセンターは大量の電力を消費するの?



AIのデータセンターには、高性能な専用チップを搭載したサーバーが多くあります。それらが24時間365日稼働するため、大量の電力が必要です。特に生成AIのように画像や動画を処理する場合は、膨大なデータを高速で処理するため、普通のデータ処理に比べて、数倍から10倍近くの電力を消費します。国際エネルギー機関(IEA)は、AIデータセンターの2024年から2030年にかけて、年間約15%増加すると予測しました。(参照2)



具体的には、どれくらいの電力を消費するの?



データセンター一拠点で、一般家庭の1万から1万6千世帯に相当する電力を消費すると言われています
参照2:IEA
生成AIのCO2排出量
データセンターで消費される電力が、化石由来のエネルギーによって生産されている場合は、大量のCO2発生に繋がります。実際に米国のグーグル社は、2023年自社の温室効果ガス排出量がCO2換算で約1430万トンとなり、2019年度と比較して48%も増加したと報告しました。
また大手IT会社であるマイクロソフトも、データセンターの新設などで、2023年のCO2排出量が2020年度と比較して30%増加したことを伝えています。(参照3)
生成AIで水資源減少のリスク
データセンターが消費するのは電力だけではありません。電力消費とともに発生する熱を冷却するために、大量の「水」を必要とします。データセンターの冷却システムは複数ありますが、その一つが冷却塔と呼ばれる装置です。冷却塔の仕組みは、水の蒸発潜熱でサーバーの熱を冷やし冷却水を循環させることで、データセンター全体の温度を一定にします。
冷却塔は莫大な水を消費するため、水資源減少のリスクが叫ばれています。米国のバージニア州は世界最大のデータセンター集積地ですが、「データセンター・アレー」と呼ばれる地域では、2019年から2023年にかけて水消費量が約63%増加しました。そして少なくとも約70億リットルの水を消費したと報告されました。(参照4)
参照3:読売新聞オンライン
参照4:US tech groups’ water consumption soars in ‘data centre alley
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生成AIの環境負荷低減への取り組み
生成AIによる環境負荷を低くするためには、どうすればいいのでしょうか。ここでは環境負荷低減のための取り組みを、わかりやすく解説していきますね。
再生可能エネルギー活用で脱炭素なデータセンターへ
データセンターが多くのCO2を排出するのは、電源が化石由来の火力発電に依存するためです。石炭や石油を原料とするエネルギーは、多くのCO2を排出することがわかっています。
参考に国内の化石由来のエネルギーと、再生可能エネルギーのCO2排出量を、比較してみましょう。(参照5)
【化石由来エネルギー】
- 石炭火力発電:約 0.943 kg CO2/kWh
- 石油火力発電:約 0.738 kg CO2/kWh
- LNG(液化天然ガス)火力発電:約 0.599 kg CO2/kWh
【再生可能エネルギーのCO2排出量(ライフサイクル全体)】
- 太陽光発電:約 0.038 kg CO2/kWh
- 風力発電:約 0.026 kg CO2/kWh
- 水力発電:約 0.011 kg CO2/kWh
このように再生可能エネルギーは発電時のCO2排出がほぼゼロであり、ライフサイクル全体で見ても非常に低い排出量となっています。CO2削減のためには再エネの導入が、いかに重要であるかわかりますね。
再生可能エネルギーは現在世界的に普及拡大しています。生成AIのデーセンターの電力を、すべて再生可能エネルギーで賄うことができればCO2排出量を大幅に削減させることが可能です。
参照5:九州電力
多様な技術によるデータセンター冷却
データセンターの冷却方法については、水資源の大量消費を回避するために大手企業が多様な技術による開発を行っています。
「株式会社NTTファシリティーズ」という会社を例に挙げましょう。サーバーを効率的に冷却する仕組みとして、冷却液をサーバーに直接送り込み、コールドプレートで冷却する液冷方式があります。このような方式のサーバーの導入を促進するために、検証施設として、NTTファシリティーズは、「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」の構築を開始しています。(参照6)
この他にも絶縁体の液体に直接サーバーを沈める液浸方式など、さまざまなソリューションの開発促進が開始されています。
参照6:NTTファシリティーズ
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生成AIの世界と日本の動向と現状
ここでは生成AIの世界と日本の動向や現状を簡単に解説していきましょう。
世界の生成AIの利用率は、中国56.3%、米国46.3%、英国39.8%、ドイツ34.6%となっています。日本の一人当たりの生成AI普及率は、9.1%であり他国と比較して低い状況です。(参照7)
また世界ではAI関連企業への投資も活発化しています。2023年に新たに資金調達を受けたAI企業数は、米国が897社で1位、中国が122社で2位、日本が42社で10位でした。(参照8)


しかし便利な反面、生成AIには環境負荷以外にも、倫理的・社会的課題が多く存在し、議論されています。国連では「持続可能な開発のための安全、安心で信頼できるAIシステムに係る機会確保に関する決議」がされ、安全、安心で信頼できるAIの促進を提唱しています。



国連の決議は、世界で推し進められているSDGsの促進にも繋がるものとして、推奨が期待されています。



多くの人が使用するからこそ、環境負荷の問題だけではなく、安心安全に生成AIを利用できることも大切なのね!
各国の環境負荷低減のための取り組み
また生成AIの環境負荷を低くするための取り組みも、各国で進み始めています。スイスでは「スイスデータセンター効率化協会(SDEA)」データセンターのグリーン化を目指した認証ラベルがあります。消費した電力のCO₂排出量を可視化するため、国際的な認証制度として注目されています。(参照9)
また米国のグーグルはケベック州に7億3500万ドルを投じて、クリーンエネルギーによるデータセンターの建設を開始しました。これにより使用する電力を、2030年までに24時間365日、カーボンフリー(炭素排出の少ない)エネルギーにする予定です。(参照10)
参照9:SWI swissinfo.ch
参照10:Harvard Business Publishing
AIが可能にする持続可能なエネルギー管理
AIは電力や水資源消費などの環境負荷がある反面、気候変動対策に有効であることも事実です。例えばエネルギー予測や需要供給最適化、効率向上、コスト削減などに大きく役立つと考えられています。
持続可能な社会構築には、地球温暖化を抑制可能な再生可能エネルギーの普及が重要です。そのためには、太陽光や風力といった天候に左右されやすい再生可能エネルギーを効率的に活用する必要があります。AIを使用することで、需要と供給のバランスを取り、さらに蓄電池に貯めたエネルギーをタイミングよく使えるよう調整することが可能です。生成AIの活用は、再エネの普及拡大を推進できる可能性を大いに秘めているのです。
また生成AIでライフサイクルにおけるカーボンフットプリントを、迅速に確実に行うことができれば、CO2排出量をより削減することもできます。
まとめ:生成AIの環境負荷を低減し有効に活用しよう
進歩したAI技術は経済をはじめとして、さまざまな分野になくてはならない存在になりつつあります。すでに生成AIは企業のみならず個人でも多く活用されています。今後、生成AIのデータセンターはますます設立され、多くの電力を必要とすることは間違いありません。
生成AIを有効に安心して使用するためにも、電力消費による温室効果ガス排出量を削減していく必要があります。
より一層の再生可能エネルギーの普及が望まれるとともに、企業や個人が脱炭素への取り組みに努力することが大切ですね。
持続可能な社会の実現のために、再生可能エネルギーの導入が世界中で重視されています。
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