2025年に知りたいプラスチック削減の取り組み・日本、海外の具体事例

プラスチック削減 取り組み事例 日本

「環境のためにプラスチックの削減をしたいと思っても、普通に生活をしていると限界がある」

このような疑問を感じることはありませんか?

この記事では「メーカーや企業の取り組みにはどのくらい効果があるのだろう」「効果的にプラスチックを削減するのにどんな方法があるのだろう」などの疑問についてそれぞれ分かりやすく簡潔に解説していきます。

この記事を読むことでプラスチック削減に関する近年の情報が詳しくわかるため、ぜひ参考にしてください。

目次

プラスチックの使用は世界的に増え続けている

プラスチックの削減が注目されているにもかかわらず、生産と使用は世界的に増え続けています。国際機関であるOECD(経済協力開発機構)の調査によると、プラスチックの生産量は2000年から2019年の間に2倍になり、234百万トンから460百万トンへと増加しています。(参照1)

削減するための対策を取らなければ、世界のプラスチック生産量は今後も増加し続けるでしょう。このまま生産を続けると世界の人口増加を上回るペースで増え続け、2040年までに736百万トンに達すると予測されています。

また、2040年になってもプラスチックがリサイクルされる割合はわずか6%にとどまると予測されており、廃棄物の増加も懸念されています。とくに、ポイ捨てや不法投棄などの不適切な管理による廃棄物が問題です。

リサイクルや焼却などで適切に処理されなかったプラスチックは雨水や川、風に流されて海に流出し、海洋環境を汚染してしまいます。

環境へのプラスチック流出は2020年と比べて2040年では50%増加すると見込まれているため、このままでは海の生態系や海産物を食べる人々に深刻な影響を与える恐れがあります。

参照1:OECD

合わせて読みたい記事:再生可能エネルギー国内・海外企業、自治体の取り組み事例10選

プラスチック削減はなぜ重要なのか?

プラスチックの削減が重要な理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 素材の材料に限りがあるから
  • 深刻な海洋汚染を引き起こすから
  • 使い捨ての利用頻度が高いから

それぞれ詳しく説明していきます。

①素材の材料に限りがあるから

プラスチック(バージンプラスチック)の原料である石油は有限な資源であるため、使用量を減らすことが重要になります。石油はプラスチックだけでなく、自動車の燃料や電気のエネルギー源、医薬品や化学繊維など、私たちの生活に欠かせないさまざまな製品の原料としても使われているからです。

このままプラスチックの大量生産・大量消費を続ければ、資源を使い果たしてしまいます。プラスチックのリサイクル技術は進歩していますが、すべてのプラスチックを何度も再生できるわけではありません。

未来の世代に貴重な資源を残すためには、プラスチック製品への依存度を下げ、使用量を削減していく必要があります。

②深刻な海洋汚染を引き起こすから

海に流出したプラスチックごみが深刻な海洋汚染を引き起こす点もプラスチックの削減が必要な理由です。

環境省の資料によると、世界全体で毎年約800万トンのプラスチックが海に流出していると推定されています。このままのペースで増加すると、2050年には海洋中のプラスチックごみの総量が魚の総量を上回ると予測されています。(参照2)

プラスチックは自然界で非常に分解されにくい物質であるため、一度海に流出すると長い間ごみとして残り続けてしまいます。

大きなプラスチックごみはウミガメや海鳥などが餌と間違えて食べてしまったり、体に絡まったりして海で暮らす生物の命を奪う原因となります。

紫外線や波の力で細かく砕けて直径5mm以下の「マイクロプラスチック」になると、人の手で回収するのは非常に困難です。

さらに、マイクロプラスチックは魚が知らず知らずのうちに取り込んでしまい、食物連鎖を通じて私たち人間の体に蓄積され、健康被害につながる恐れがあるといわれています。プラスチックの削減は地球環境だけでなく私たちの健康を守るためにも重要です。

参照2:環境省

③使い捨ての利用頻度が高いから

リサイクルをせずに使い捨てるプラスチックの利用が多く、資源を無駄遣いしてごみの量を増やすことにつながっています。プラスチックは安価で軽く加工しやすいことから、私たちの生活のあらゆるところで使われています。

以下のグラフは2021年において日本で排出された廃プラスチックの分野別内訳です。

日本における廃プラスチック排出量の分野別内訳

データ参照:一般社団法人 プラスチック循環利用協会(グラフ作成:地球未来図作成)

とくに、包装や容器で大量に使用されていることが分かります。

日本でプラスチックが多く使われている製品の具体例としては、ペットボトルや歯ブラシ、使い捨ての食器・カトラリーなどが挙げられます。おおよその販売数は以下のとおりです。

  • 日本のペットボトルの年間販売数(参照3):約280億本
  • 日本の歯ブラシの販売数(参照4):約3億本

プラスチックの利用を減らすにはこれらの原料をプラスチックから別のものへと変えていく必要があります。

参照3:PETボトルリサイクル推進協議会
参照4:東京くらしWEB

合わせて読みたい記事:【最新】ペロブスカイト太陽電池の実用化はいつ?次世代ソーラーの買い時を解説

日本と世界のプラスチックの再利用率は?

2021年において日本で排出された廃プラスチックは823万トンで、そのうち87%(717万トン)が再利用されています。(参照5)

お客様

8割以上も再利用されているのね。もっと少ないと思ってたわ

地球未来図

確かに再利用率は高いですが、日本ではエネルギーへの変換もリサイクルに含まれる点に注意しましょう。一般的に、リサイクルと聞くと牛乳パックからトイレットペーパーを作るようなイメージを浮かべる方が多いでしょう

お客様

リサイクルって製品に再利用することではないの?

地球未来図

もちろん製品に再利用することもリサイクルと呼びますが、日本では廃プラスチックを燃やして火力発電をすることもリサイクルにあたります。これをサーマルリサイクル(エネルギー回収)と呼びます

お客様

焼却してもリサイクルになる場合があるのね。製品にリサイクルするのは何割くらいなのかしら

地球未来図

製品の原料にするリサイクル(マテリアルリサイクルとケミカルリサイクル)は25%でした。一方で、サーマルリサイクルは63%を占めています

お客様

モノとしての再利用は少ないのね

地球未来図

そうですね。モノとしての再利用率を世界各国と比較すると下表のとおりになります(参照6)

国・地域リサイクル率(日本以外は2019年度)
日本25%
中国12.8%
アメリカ4.5%
ヨーロッパ12.4%
世界全体9.3%
お客様

ほかの先進国と比べてリサイクル率は高いのね

地球未来図

そうなりますね。ただ、廃プラスチックの4分の3が焼却や埋め立てに回されている現状を考えるとリサイクル率はまだまだ低いといえますね

参照5:一般社団法人 プラスチック循環利用協会
参照6:Our World in Data

合わせて読みたい記事:太陽光パネルの義務化はなぜ?東京以外も?脱炭素への貢献度を解説

プラスチックのリサイクル回収と削減はどう違うか

プラスチックのリサイクルと削減はどちらも環境汚染を防ぐことにつながりますが、リサイクルよりも使わない方が環境にとっては重要です。その理由は、以下の3つです。

  • 日本のリサイクルは熱エネルギーへの変換が多い
  • 再生プラスチックをつくるためにもエネルギー資源が使われる
  • 回収されたプラスチックは処理しきれず輸出されてきた過去がある

それぞれ詳しく説明していきます。

①日本のリサイクルは熱エネルギーへの変換が多い

日本でのプラスチックのリサイクルは燃焼時の熱エネルギーを利用するサーマルリサイクルが大部分を占めています。製品として再利用される割合は低いのが現状です。

サーマルリサイクルはごみの埋め立て量を減らす効果はありますが、プラスチックを資源として循環させているわけではありません

プラスチックの消費量が変わらない場合、燃やした分だけ新しい資源を使ってプラスチックを作る必要があります。限りある資源を消費し続けることに変わりはないため、リサイクルだけに頼るのではなく、プラスチック使用量を減らしていくことが重要になるのです。

②再生プラスチックをつくるためにもエネルギー資源が使われる

廃プラスチックをリサイクルして再生プラスチックを作る過程においても、エネルギー資源が必要です。汚れが混ざったプラスチックを洗って種類ごとに分け、溶かして加工する一連の工程で、電力や燃料が使われます。

新しいプラスチックを作るよりは省エネルギーになる場合もありますが、リサイクルはエネルギー消費ゼロで行えるわけではありません。電力や燃料を使う際にCO2も排出されるため、環境に負荷がかかります。環境負荷を減らすうえでは、プラスチックの使用量そのものを削減することが大切です。

③回収されたプラスチックは処理しきれず輸出されてきた過去も

日本国内で回収された廃プラスチックの一部は、国内で処理しきれずに海外へ輸出されてきた歴史があります。2015年には約160万トンものプラスチックが世界全体に輸出されており、回収されたプラスチックが必ずしも国内で適切に処理されている状況ではありませんでした。(参照7)

輸出されたプラスチックが海外で不法に投棄されることで、環境汚染に間接的にかかわってしまう問題もありました。このような問題もあり、近年は中国やタイ、ベトナムなどで廃プラスチックの輸入が禁止もしくは規制されています。

回収されたプラスチックが他国に環境問題を押し付ける形で処理されてきた過去を踏まえると、日本ではプラスチックの使用量自体を削減していくことが、国際的な責任の観点からも極めて重要です。

参照7:ニッセイ基礎研究所

プラスチックの削減にはデメリットもあるの?

プラスチックの削減には、デメリットもあります。プラスチックの軽さが輸送において役立つことがあるからです。

たとえば、プラスチック製のペットボトルが20本入った段ボール箱とアルミ缶に入った同じ量の水を工場からコンビニエンスストアに輸送する場合を想定します。

この場合プラスチックの方が軽いことからガソリン使用量が少なくなるため、プラスチックを削減すると輸送時のガソリン使用量が増えてしまう可能性があるでしょう。

ペットボトルの代替えとしては缶や紙パックがサスティナブルな資源であり、軽いことからも注目されています。

合わせて読みたい記事:SDGsと脱炭素は関係あるの?それぞれの意味や役割を紹介

プラスチックの削減のために今すぐできることは?

効果的にプラスチックの利用を減らすには以下のような方法が考えられます。

  • 商品や企業をかしこく選ぶ
  • 不便さを受け入れる

ここで紹介する方法と現在の日常生活を完璧に両立することは難しいですが、ただ覚えておくだけでも、毎日の生活で少しづつ環境に優しい選択ができるようになるでしょう。

①商品や企業をかしこく選ぶ

プラスチックの使用量を減らすためには、日々の買い物において環境に配慮した商品や取り組みを行っている企業を意識的に選ぶことが重要です。具体的には、以下のようなことを意識するとよいでしょう。

  • 再生プラスチックや紙パッケージを使っている商品を選ぶ
  • 個別包装の少ない店で商品を購入する
  • 量り売りを利用する

私たちの消費行動を変えることで、企業が環境に配慮した製品開発や販売方法へとシフトしていく可能性があります。結果として社会全体のプラスチック削減を後押しすることにつながるのです。

②不便さを受け入れる

プラスチック削減のためには、少しの不便さを受け入れることも必要です。普段の生活の中にある「使い捨て」を避ける方法を考えてみましょう。

たとえば、水筒を持ち歩くことでペットボトルを使わないことや、旅行の際にプラスチックで包装されたホテルのアメニティを使わないことが挙げられます。最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、習慣化することで新たなライフスタイルの一部になります。

また、2020年のレジ袋有料化のように、これからもプラスチックに対する新たな規制や変化があるかもしれません。地球環境を守るためには、私たちのライフスタイルをプラスチックを使わない生活に変えていく必要があります。

合わせて読みたい記事:カーボンニュートラルの具体例13選|国内・海外の最新事例を紹介

プラスチックを削減するための国内取り組み事例

国内外のさまざまな企業や個人店舗がプラスチックを削減する取り組みを行っています。ここでは、まず3つの国内企業の取り組み事例を紹介します。

① 株式会社すかいらーくホールディングス

株式会社すかいらーくホールディングスはガストやバーミヤンなど数多くのブランドを有する日本の大手レストランチェーンです。すかいらーくグループでプラスチック使用量を削減するために、以下のような取り組みを行っています。(参照8)

  • プラスチック製ストローを廃止して、紙製ストローに変更
  • 竹割り箸の包装をプラスチックから環境に優しい紙に変更
  • テイクアウトや宅配用のカトラリー(スプーンやフォークなど)をプラスチックから木製に変更

店舗や宅配で使われていたプラスチック製のストローやカトラリーを紙製や木製に変えることで、プラスチックを削減しています。各店舗への導入を段階的に進めており、すかいらーくグループは2050年までに使い捨て石油由来プラスチック使用量をゼロにする目標を掲げています。

参照8:株式会社すかいらーくホールディングス

② 味の素株式会社

味の素株式会社はうまみ調味料の「味の素」で有名な日本の食品企業です。グループ会社全体でプラスチック廃棄物ゼロ化への取り組みを進めています。(参照9)

たとえば、2023年の春に「ほんだし」スティック品種のパッケージをプラスチックから紙に変更しました。この変更により毎年32トンのプラスチック使用量が削減できると試算されています。

他にも、オリーブオイルやキャノーラ油の容器を紙製にしたり冷凍食品のプラスチック包装を薄くしたりするなどさまざまなプラスチック使用料を削減する取り組みを行っています。

参照9:味の素株式会社

③ エコストアパパラギ

エコストアパパラギは神奈川県藤沢市でプロダイバーによって開業されたお店です。ダイバーとして海と向き合ってきたなかで、プラスチックごみによる海洋汚染を目の当たりにし、人と地球に少しでも負荷をかけないライフスタイルを提言したいとの思いからエコストアを立ち上げています。(参照10)

エコストアパパラギはプラスチックフリー商品を多数扱っており、食品や洗剤は量り売りをしています。プラスチックのレジ袋やラッピングはなく、ノンプラスチックを徹底しているお店です。

参照10:エコストア パパラギ

プラスチックを削減するための海外取り組み事例

海外ではプラスチック削減のどのような取り組み事例があるのでしょうか?以下に2つ事例を紹介します。

①イギリス・缶入りの水

イギリスでは缶入りの飲料が増えています。その中でも注目を集めているのが水(ミネラルウォーター)です。ペットボトルと比べて缶はリサイクル率が高く何度でもリサイクルできるためさまざまな企業が缶のミネラルウォーターを販売しています。

たとえば、飲料メーカーのCano Waterは「Don’t Bottle It!(ボトル詰めをしないで!)」をキャッチコピーに缶のミネラルウォーターを扱っています。

公式ウェブサイトではプラスチックのペットボトルが海を汚染していくスピードを表示しており、持続可能な缶を使う重要性をユニークにアピールしている企業です。(参照11)

イギリスではプラスチックを削減するために、ペットボトルを缶に代替する取り組みが飲料メーカーで進んでいます。

参照11:Cano Water

②北欧・再生プラスチックと植物油からつくられた歯ブラシ

北欧のノルウェーNo1オーラルケアブランドのジョーダンは、リサイクル素材を使用した製品を販売しています。(参照12)

環境にやさしい歯ブラシ「Green Clean(グリーンクリーン)」のハンドルは100%リサイクルプラスチック製で、毛は100%植物由来のナイロン、パッケージは100%再生紙を使用しています。妥協のない持続可能なオーラルケアです。

再生資源を活用した製品開発と実績が評価され、2019年に欧州プラスチックリサイクル協会よりベストリサイクルプラスチック賞「Sustainability Winner」を受賞しています。

参照12:Jordan

合わせて読みたい記事:【最新】日本の発電方法ランキング・再生可能エネルギーの普及はどれくらい?

まとめ:プラスチックの削減を心がけよう

プラスチックは限りある資源の石油を原料にしており、使い続けると資源が枯渇してしまいます。リサイクル率は世界的に低く、多くのプラスチックは焼却されたり埋め立てられたりしているのが現状です。

プラスチックごみが適切に管理されていないことで海に流出し、海洋汚染を起こしている問題もあります。海の生態系だけでなく私たちの健康にも影響を与える可能性があるため、プラスチック使用量を減らしていく必要があります。

そのためには再生プラスチックや紙パッケージを使っている商品を選ぶ、水筒を持ち歩いてペットボトルを購入しないなど、私たちがプラスチックの削減を心がけることが大切です。

SNSでシェアする

地球未来図について

「未来の地球のために、私たちがいまやるべきこと」を紹介するメディアサイトです。太陽光システム、再生可能エネルギー、脱炭素、自然環境の保護をテーマに、エコライフを正しく理解するために知っておきたい最新情報をお届けしています。

目次