いよいよ、2025年から東京都で太陽光パネルの義務化が開始されます。
太陽光パネルの設置義務化は、すでに世界各国で始まっていることをご存知でしょうか?
義務化が開始される一番の理由は、環境を守るためです。
本記事では、太陽光パネルの義務化について深掘りしていきます。
この記事を読むことで、太陽光パネル義務化の背景がよくわかり、30年、50年後の未来に向けて、なぜ太陽光パネルが重要なのか納得できるでしょう。
専門用語なども詳しく解説しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
- 太陽光パネル義務化が必要な理由と内容
- 太陽光パネル義務化の重要性
- 太陽光パネル義務化を行っている国や取り組み
- 太陽光パネル義務化の課題
- 太陽光パネルのリサイクルの現状
太陽光パネル義務化が必要な理由
太陽光パネルの設置義務化の必要な理由は、以下の2つです。
- 脱炭素とカーボンニュートラル対策
- 2030年までに温室ガスの50%削減
太陽光パネルの設置義務化が必要な理由に共通しているのは「CO2を減らすこと」と「エネルギーが足りなくなった時の対策」の2つです。
CO2の削減とエネルギー危機に備えるために、太陽光パネルの義務化が必要になります。
ところどころ専門用語が出てくるので、一つずつ用語を解説しながら説明します。
①脱炭素・カーボンニュートラル対策
太陽光パネルの義務化は、脱炭素とカーボンニュートラルを実現するために、東京都で行われるものです。
「脱炭素」と「カーボンニュートラル」は似た言葉ですが、実は少し意味が異なります。脱炭素とカーボンニュートラルに共通しているのは、CO2などの温室効果ガスを減らそうという点です。
脱炭素は、CO2の排出量をゼロにする取り組みのことを指しています。対して、カーボンニュートラルは「CO2を含むメタンやフロンなどの温室効果ガスの排出量を抑えながら、排出してしまった温室効果ガスを吸収することで、温室効果ガスの排出量をゼロにする」という取り組みのことです。
脱炭素はCO2の排出量をゼロにすることに対して、カーボンニュートラルはCO2を減らしながら吸収も行い、温室効果ガスの排出を差し引きゼロにする取り組みです。
温室効果ガスは、化石燃料を燃やすことで排出されます。私たちの生活の中では、電気の発電や火を使用することによって、温室効果ガスが排出され続けています。
温室効果ガスが環境に悪いのは分かったけど、地球温暖化が進んだら、地球はどうなっちゃうの?
いい質問です。
地球温暖化が今よりも悪化すると、地球全体で海面上昇や気温上昇が起きます。
海面上昇や気温上昇が起こることで、災害の増加や干ばつ、水不足が起き、地球上の動植物が生きていけない環境になってしまう可能性があります。
地球上の動物や植物を守るためにも、温室効果ガスを削減しなければいけないのね。
温室効果ガスを出さないようにするには、何をすればいいの?
温室効果ガスは、化石燃料を燃やすことで発生します。
化石燃料は、火力発電を行うときなどに使用され、日本では2023年に72.8%の割合で火力発電が行われています。(参照1)
化石燃料を使って火力発電を続けていたら、地球温暖化を悪化させてしまうってこと?
まさにその通りです。化石燃料を使用した火力発電を少なくするために、太陽光パネルのような再生可能エネルギーが必要になります。
化石燃料は、世界中が必要としている資源です。
近ごろ、化石燃料は人口増加などの理由から、世界各国で使用する量が増え続けていることをご存知でしょうか。
化石燃料には限りがあり、2020年時点で発見されている化石燃料では、あと53. 5年ほどで使い切ってしまうとされています。(参照2)
化石燃料の減少や、供給の不安定さによるエネルギー問題に対処するためにも、太陽光パネルの導入は欠かせません。
脱炭素やカーボンニュートラルを実現し、エネルギー危機に対処するためにも、再生可能エネルギーの一つである太陽光発電への切り替えが必要です。
②2030年までに温室効果ガスを50%削減
東京都では「2030年までに2000年に比べて、温室効果ガスの排出を50%削減する」という政策を打ち出しています。温室効果ガスを減らすために、東京都が打ち出している政策を「カーボンハーフ政策」といいます。
カーボンハーフ政策を実現するために必要なのが、太陽光パネルの設置義務化です。
なぜ、東京都が温室効果ガスを減らす政策を始めたのかというと、2015年に決定された「パリ協定」で合意が行われたからです。パリ協定とは、簡単にいうと「世界各国で温室効果ガスを削減するための枠組み」のことです。パリ協定には、約190の国と地域が参加しています。
2023年現在、CO2排出量のうち、約7割が建物から出されています。
現在ある建物は、2050年までに約半分が建て替えられるとされており、うち7割が住宅です。(参照3)
住宅を含めた新築される建物に、太陽光パネルを導入することで、東京都内でのCO2排出量を減らすことが狙いです。
参照3 太陽光パネル設置に関する Q&A(東京都)
③家庭におけるCO2排出の50%が電気
ガソリンの燃焼、灯油、都市ガスの利用など、私たちが日常生活を送っているだけで、残念ながらCO2が排出されます。その中でも、一般家庭から排出されるCO2のなんと約50%は電気の使用によるものです。(参考4)
電気を電力会社から購入する場合には、さまざまな発電方法で作られた電気が混ざっているため、再生可能エネルギーで発電した電気だけを使うということはできません。
太陽光パネルを自宅に設置し、自家発電をおこなうことで再生可能エネルギーをより多く使い、環境にやさしいエネルギーでの時給自足が可能になります。
太陽光パネル義務化で30年後の未来はどうなる?
太陽光パネルが日本で義務化され、30年後の2025年、日本や世界はどう変化しているのでしょうか?地球環境の変化を正確に予測することはできません。
ですが、東京都は太陽光パネル義務化によるCO2削減量は年間10万トンと公表しています。(参照5)
なぜなら、太陽光パネルの設置数を増やすことで、植林と同じCO2削減効果が見込まれるからです。
一般的な新築住宅には4kWの太陽光パネルを導入するケースが多いです。
4kWの太陽光パネルで一年間発電すると、杉の木約200本分のCO2吸収量に値するCO2を削減することができます。(参照6)
環境省によると、日本では現在、年間で12億トン以上の温室効果ガスを排出していて、2050年までに、これを実質ゼロにする、つまりカーボンニュートラルの実現が必要です。
そのために、太陽光パネルの設置や植林など、今できることから確実に実行していくことで、未来を変える必要があります。
太陽光発電などによってCO2削減し、植林などによってCO2吸収量を増やしていくことで、カーボンニュートラルを実現できる可能性が高まります。
参照5:東京新聞 TOKYO Web
参照6:東京都環境局2
世界の太陽光パネル義務化
世界各国では、東京都のような太陽光パネル義務化の動きが進んでいます。
日本では太陽光パネルの義務化が始まるけど、地球温暖化を止めるためには、世界中で太陽光パネルを設置しなければいけないのでは?
その通りです。実際に、海外では太陽光パネルの義務化を行っている国があります。例えば、アメリカのカリフォルニア州では、日本よりも早い2020年1月から太陽光パネルの義務化が始まりました。
一方ハワイでは、2015年に「再生可能エネルギー100%法案」が可決され、すでに太陽光パネルの普及が進んでいます。ハワイでは、再生可能エネルギーを有効活用するために、蓄電池の導入プログラムが開始されています。
すでに、太陽光パネルが普及している場所もあるのね。
そうなんです。他にも、フランスでは2009年に法律が制定され、新しい屋根には太陽光パネルか植物を設置しなければいけません。
太陽光パネルの代わりに、植物で屋根を覆う国もあるのね!
植物で屋根を覆うことで、CO2を吸収できたり、部屋の中に熱を通しにくくなったりする効果が期待できるのです。
なるほど。植物で屋根を覆えば、自宅の雰囲気を壊さずに環境への貢献ができるわね。
脱炭素やカーボンニュートラルは、日本だけではなく、世界全体の取り組みです。世界的にも太陽光パネルの義務化や、環境への配慮ができる政策が進んでいるのが現状です。
太陽光パネルの義務化の内容【東京都の例】
東京都の太陽光パネル義務化では、全ての住宅に太陽光パネルを設置しなければいけないわけではありません。東京都の太陽光パネル義務化の条件は複雑なので、家庭にどのような影響があるかを解説します。
まず、太陽光パネル義務化は、家を建てる人に課せられる義務ではありません。太陽光パネルの設置義務があるのは、ハウスメーカーです。太陽光パネルの設置以外でも、断熱効果を含めた省エネ性能を考慮した住宅の建設が求められます。
ただし、太陽光パネルの導入費用は住宅の購入者が負担することになります。ハウスメーカーや政府が、太陽光パネルの導入費用を、全額負担してくれるわけではないので注意しましょう。
また、太陽光パネルの導入義務があるのは、これから新しく建てる住宅です。既にある住宅の場合、太陽光パネルを導入しなくても問題ありません。
屋根の小さい住宅や、日射の条件に合っていない住宅なども、太陽光パネルを無理に設置する必要はありません。
太陽光パネルの設置義務化の問題点
太陽光パネルの設置義務化には、新築価格が高くなることや、太陽光パネルを管理する手間が増えるという課題があります。
また、ハウスメーカーにとっても、太陽光パネルの設置義務化に関する説明や、手続きをしなければいけない点は、制度の課題だといえるでしょう。
ただ、太陽光パネルは経済的にも、環境的にもメリットが大きい住宅設備です。近ごろは、電気料金が高騰しているので、自家消費するだけでも十分にメリットを得ることができるでしょう。
太陽光パネル義務化にとらわれず、太陽光パネルのメリットに目を向けて見ることで、本当に必要な設備かを見極めることができます。
太陽光パネルの義務化はいつから・どこで始まる?
東京都以外にも京都府や群馬県、神奈川県川崎市で、太陽光パネルの導入義務化が行われています。
ただし、東京都以外の京都府・群馬県・神奈川県川崎市では、2000平方メートル以上の建物を建築するときに、太陽光パネルを導入する義務が発生します。
東京都とは異なり、よほど大きな住宅を建てない限り、京都府・群馬県・神奈川県川崎市では、太陽光パネルの導入義務はありません。
東京都 | 2025年4月から |
京都府 | 2020年4月から |
群馬県 | 2023年4月から |
神奈川県川崎市 | 2025年4月から |
太陽光パネルの義務化の見送り
2024年現在、太陽光パネル義務化の見送りがされた都道府県はありません。
むしろ、今後も太陽光パネルの設置義務化の動きを見せる都道府県は、増えると予想されています。また、国全体の取り組みとして、太陽光パネルの設置義務が開始される可能性があります。
太陽光パネル点検の義務化
太陽光パネルで発電した電気を売電する場合、定期的にパネルの点検を行わなければいけません。
太陽光パネルの点検は、設置後1年目と、その後は4年に1度のペースで行う必要があります。点検には、1万円から2万円程度の費用がかかります。
太陽光パネルの点検を定期的に行うことにより、メリットがあることも事実です。お金はかかってしまいますが、太陽光パネルの点検や掃除を定期的に行うことで、パネルの故障を防げたり、発電量を増やしたりすることができます。
太陽光パネルリサイクルの義務化
2024年現在では、日本で太陽光パネルをリサイクルする義務はありません。しかし、太陽光パネルをスタンダードな設備として扱っていく以上、日本でも太陽光パネルのリサイクル義務化は避けられないと言えるでしょう。
環境のために太陽光パネルを導入しても、ゴミが増えてしまっては本末転倒です。太陽光パネルを設置する件数の増加に伴い、パネルのリサイクル義務化が開始される見込みです。
太陽光パネルの寿命は20年から30年とされており、2010年ごろから普及し始めた太陽光パネルは、2030年ごろから廃棄量が増えることが予想されています。
ほとんどの太陽光パネルは、ジャンクションボックス、アルミ枠、ガラス、バックシートに分解することで、ほぼ100 %リサイクル可能です。
欧州では、太陽光パネルのリサイクルと、リユースの義務化がすでに開始されています。日本では、リサイクルの義務化はされていませんが、太陽光パネルをリサイクルできる業者に廃棄を依頼することで、太陽光パネルをリサイクルすることが可能です。
まとめ:環境のためには太陽光パネルの義務化は必要
太陽光パネルの導入は、これからの地球を守っていくために必要不可欠です。
太陽光パネルのメリットが大きい以上、費用などのデメリットだけを見て、導入をやめてしまうのはもったいないといえるでしょう。
特に、地震が多い日本では、停電対策が可能になる点は大きなメリットとなります。
電気代削減や停電対策のために、太陽光パネルの導入を検討してみてはいかがでしょう。